高校古文入門:用言の活用⑤
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
この記事は、高校に入って古文を本格的に学び始める新高1生を対象にしたものです。
前回は、変格活用について学習しました。
今回は、形容詞・形容動詞について学んでいきましょう。
形容詞:ク活用/シク活用
〇ク活用:形容詞の終止形に「て」や「なる」を付けてみて、活用語尾が「ク」になる
〇シク活用:〃活用語尾が「シク」になる
→下の活用表の終止形以外に「し」をくっつけるだけ
赤 | 赤 | 語幹 |
から | く | 未然 |
かり | く | 連用 |
〇 | し | 終止 |
かる | き | 連体 |
〇 | けれ | 已然 |
かれ | 〇 | 命令 |
形容詞は、状態・性質を示す語で、終止形の語尾が「し」や「じ」になる語です。
たとえば、「赤し」「いみじ」などですね。
上の表は、「赤し」を例にとったものです。
2列あって混乱したかもしれませんが、下に助動詞がくるかどうかで使い分けます。
下に助動詞がない場合は本活用、ある場合は補助活用を使います。
「赤くて」とはいいますが、「赤かりて」とは言いません。
同様に、「赤かりけり」とはいいますが、「赤くけり」とは言いません。
唯一の例外は、断定の助動詞「なり」。
こちらは助動詞ですが、本活用につきます。
例)断定の「なり」:連体形接続 伝聞推定の「なり」:終止形接続(終止形がウの音でないものは、連体形接続)
美しきなり(美しいのである:断定) 美しかるなり(美しいようだ:伝聞推定)
形容動詞:ナリ活用/タリ活用
〇ナリ活用:和語+なりの形で、状態・性質を示す語→あはれなり、穏やかなり…
〇タリ活用:漢語+たりの形で、状態・性質を示す語→俄々たり…
穏やか | 穏やか | 語幹 |
〇 | なら | 未然 |
に | なり | 連用 |
〇 | なり | 終止 |
〇 | なる | 連体 |
〇 | なれ | 已然 |
〇 | なれ | 命令 |
堂々 | 堂々 | 語幹 |
〇 | たら | 未然 |
と | たり | 連用 |
〇 | たり | 終止 |
〇 | たる | 連体 |
〇 | たれ | 已然 |
〇 | たれ | 命令 |
形容動詞は、形容詞と同じく状態・性質を示す語で、「和語+なり」「漢語+なり」の形をとります。
「名詞+なり、たり」との区別がよく問われるので、「なり、たり」の上に状態・性質をとる語だという基本をおさえておきましょう。
練習問題
1、次の傍線部の語について、基本形を示した上で、活用の種類(A)と活用形(B)を選びなさい。(琉球大)
a ある地頭の家の前栽の桜の花を、一枝折りて逃げけるを、あるじ見つけて、あの法師を捕らへよ」と…
b 禅師、不詳にあひて、せむ方なかりければ、「殿に、かく申したまへ」とて、
c かの禅師、初めて修行せむとて、同行一人具して都を出でて、」広州のある里に行き暮れて宿借るに、すべて貸さざりければせむ方なくて、ある小屋のあやしげなるに立ち寄りて、日も暮れにければ、
A
①四段活用
②下一段活用
③下二段活用
④ラ行変格活用
⑤ナ行変格活用
⑥ナリ活用
⑦タリ活用
⑧ク活用
⑨シク活用
B
①未然形
②連用形
③終止形
④連体形
⑤已然形
⑥命令形
2、次の傍線部の語について、品詞(A)と終止形(B)を答えなさい。(宮崎大)
辰巳より引き回し、青山峨々と岐に聳え、経路松柏生茂りたり。
解答
1、a ③⑥ b ⑧② c ⑥④
a「捕らへよ」が動作であることは判断できると思いますから、動詞であることは確定です。
間違いやすい一例として、終止形を考えたとき「とらへる」と考えてしまったとしましょう。
その場合、「よ」の音が出てくる余地がなくなります。
そこで、「捕らふ」が終止形だと判断できればゴールはすぐそこです。
打消の助動詞「ず」をくっつけると、「捕らへず」が自然だと分かりますから、ハ行下二段活用命令形だと決まりますね。
b「なかり」ときた時点で、形容詞の補助活用だと分かるようにしましょう。
終止形は、ク活用だろうとシク活用だろうと「し」か「じ」です。
「なし」ですね。
「て」をくっつけると「なくて」となり、ク活用連用形が確定です。
助動詞「けり」の上にあるので「連用形」と判断できれば、なおよいですね。
c「あやしげなる」を動詞だと思ってしまった人、ちょっと待ってください。
「あやしげ」は動作ですか?状態・性質ですか?
この観点をもっておけば、形容動詞ナリ活用連体形だということは一目で見抜けるでしょう。
2、形容動詞 峨々たり
漢語+たり→形容動詞というパターンが頭に入っていれば用意だったと思います。
ちなみに、意味は「山が険しくそびえたっている様子」です。