高校古文入門:用言の活用③

広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。

この記事は、高校に入って古文を本格的に学び始める新高1生を対象にしたものです。

前回は、カ行変格活用について学習しました。

今回は、他の変格活用について学んでいきましょう。

サ行変格活用/ナ行変格活用/ラ行変格活用

〇サ行変格活用(サ変):す、おはす、ものす、音読み+す・ず

おは語幹
未然
連用
終止
する連体
すれ已然
せよ命令
「す」に語幹はありませんから、「おはす」を例にとります。

「す」は現代語の「する」と同じだと考えてください。

「おはす」は尊敬語で「いらっしゃる」、「ものす」は色んな動詞の代わりになる「代動詞」です。

「音読み+す・ず」とは、「奏す・啓す・念ず・困ず」など、音読みの漢字に「す・ず」がくっついたもので、複合動詞だと考えてください。

「ず」という見た目だからといって、打消の助動詞「ず」と間違えないようにしましょうね。


〇ナ行変格活用(ナ変):死ぬ、去ぬ(往ぬ)〈いぬ〉

語幹
未然
連用
終止
ぬる連体
ぬれ已然
命令
「す」に語幹はありませんから、「おはす」を例にとります。

「死ぬ」「去ぬ」という景気の悪い2語はナ変動詞です。

「去ぬ」は広島の方言として残っていて、「はよいねや!(はやくどこか行け!)」の「いね」はここからきていますね。

平仮名で表記されたときに漢字として思い浮かべられるかがポイントです。


〇ラ行変格活用(ラ変):あり、をり(居り)、はべり(侍り)、いまそかり(いますがり、いまそがり…)

語幹
未然
連用
終止
連体
已然
命令

動詞の終止形は基本的に「ウの音」ですが、ラ変は「イの音」になるので注意が必要です。

あり、をり、はべり、いまそかりの4語がラ変動詞ですが、いまそかりは多少音が濁ったりします。

をり、はべりについては、漢字でイメージできるようにしておいてくださいね。


さぁ、活用表を徹底的に音読して覚え、どの単語が何活用かもセットで覚えましょう。

覚えたら、さっそく練習問題にトライしてください。

練習問題

1、次の傍線部の語の活用の種類を選びなさい。(早稲田大)

出家していまそかりける。

①ラ行四段活用

②ラ行上一段

③ラ行上二段活用

④ラ行下二段活用

⑤ラ行変格活用


2、次の傍線部の語の活用の種類を選びなさい。(東洋大)

かくなど言ひて、けしきも見むと思ひて、元の人のがり往ぬ

①ナ行下一段活用

②ナ行下二段活用

③ナ行四段活用

④ナ行変格活用

⑤ナ行上一段活用


3、次の傍線部の語の活用の種類を選びなさい。(青山学院大)

筑紫人の旅に死してこのものになりたりと、世の諺にいへりけり。

①シク活用

②ナ行変格活用

③ナ行四段活用

④サ行四段活用

⑤サ行変格活用

解答

1、⑤

暗記動詞は暗記で一発、ということがよくわかる問題ですね。

これで早稲田も大丈夫、は言いすぎですが、「助動詞」の知識を強調されるあまり「用言の活用」の知識が手薄になるというのはありえる話なんですよ。

基礎基本、徹底しておきましょう。

ちなみに、過去・詠嘆の助動詞「けり」の上は連用形です。


2、⑤

こちらも暗記で一発問題でしたが、複合動詞化していることに気付けたでしょうか?

「のがる」という動詞が「往ぬ」にくっついて一語になっているんですね。

ちなみに終止形です。


3、⑤

「死」という漢字を見た瞬間に「死ぬだ!」「ナ変だ!」と飛びつかないでくださいね。

「音読み+す・ず」、「死」って音読みですよね。

こういったひっかけ問題も存在するので、どういうところでひっかけられるか、という知識を増やしていきましょう。