高校古文入門:用言の活用②
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
この記事は、高校に入って古文を本格的に学び始める新高1生を対象にしたものです。
前回は、文法知識を習得するための準備段階として、国文法の用語を復習しました。
今回から、用言の活用について具体的に学んでいきましょう。
動詞の活用〈カ行変格活用〉
用言とは活用する自立語のことであり、品詞としては「動詞」「形容詞」「形容動詞」の三種類がありましたね。
まずは動詞の活用について学んでいきますよ。
動詞を簡単に定義しておくと、①「動作を示す語」で②「言い切りがウの音」になる語、ということになります。
現代語と古語では言い切りの形が違うのが難点ですが、こればっかりはなれる他ありません。(例えば、「捨てる」「起きる」は、古語で「捨つ」「起く」となります。)
これから全部で9種類の活用表を覚えることになるのですが、まずは1つやってみましょうか。
〇カ行変格活用(カ変):来〈く〉、まうで来
〇 | 語幹 |
こ | 未然 |
き | 連用 |
く | 終止 |
くる | 連体 |
くれ | 已然 |
こ こよ | 命令 |
「カ行変格活用」の動詞は「来」と「まうで来」の2語だけです。(複合動詞については今は触れません。)
ちなみに、「来」の「活用の種類」を問われた場合、答えは「カ行変格活用」、「くる」の「活用形」を問われた場合、答えは「連体形」となります。
「活用の種類」と「活用形」をごちゃまぜにしてしまう人が多いので、要注意です。
次に、「語幹」と「活用語尾」についてご説明します。
たとえば、「走る」という動詞に打消の助動詞(「~ない」という意味)「ず」をくっつけると、「走らず」となりますよね。
「走〈はし〉」の部分の音は変わっておらず、「る」の音が「ら」に変化しているわけです。
前者を「語幹」、後者を「活用語尾」と言いますが、「来〈く〉」に「ず」をつけると「来ず〈こず〉」となります。
つまり、「来」は語幹と活用語尾の区別がない語なんです。
「まうで来」の場合、「まうで」が語幹で「来」が活用語尾となりますね。
以上を踏まえて、皆さんにできるようになってほしいことを整理しておきます。
①「来」「まうで来」のように、暗記するだけで活用の種類が確定する動詞(暗記動詞)は、見た瞬間に判断できるようにしておく。
②「こ き く くる くれ こ・こよ」という活用の仕方を暗記する。
③練習問題を通して、活用形を決める語のルールを覚えていく。(たとえば、打消の助動詞「ず」の上には未然形をとる、など)
練習問題
*高校古文の初学者は、解説から読み進めることをおススメします。
問 次の傍線部の「来」の読み方の組み合わせを選びなさい。(日本大)
Aうぐいすの人来と鳴くや
B今またもまゐり来む。」とていでぬ。
Cたえずみづからも来とぶらひけり。
①A:き B:き C:こ
②A:き B:く C:き
③A:く B:き C:く
④A:く B:こ C:き
⑤A:こ B:こ C:く
⑥A:こ B:く C:こ
解説
④
まずはAについてみていきましょう。
古文において、「と」「など」「とて」の上には会話文や心の中で思ったことが隠れていることが多いです。
よって、「と」「など」「とて」の上にはカギカッコを補う癖をつけておきましょう。
そうすると、
うぐいすの「人来」と鳴くや
となります。
カギカッコに括られた最後に「来」がある以上、活用形は「終止形」か「命令形」が候補にあがります。
「うぐいすの」の「の」は主格を示しますので、「うぐいすが”人が来る”と(伝えて)鳴くのだろうか」、もしくは「うぐいすが”人よ来い”と(伝えて)鳴くのだろうか」という訳になります。
カ行変格活用終止形の音は「く」、命令形の音は「こ」「こよ」なので、この時点では①と②が解答にならない、ということしかわかりません。
よって、B、Cについて検討していきます。
前回の記事でお伝えしましたが、活用形は後にくる語が決定するのが基本でした。
でも、Bの「来」の後にある「む」が上にどんな活用形をとるのかという知識を私たちはまだ知りません。
ですから、いったんスルーしてCにいきます。
すると、「来」の後ろに「とぶらひ」という語が来ていますよね。
これが「とぶらふ」という動詞(つまり用言)だと分かれば、用言に連なる形、連用形に活用するのが適当だと判断できます。
カ行変格活用の連用形は「き」、この時点で④が解答に決定します。
ちなみに、助動詞「む」は上に未然形をとる、という知識をここで仕入れておきましょう。