高校古文入門:用言の活用①
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
この記事は、高校に入って古文を本格的に学び始める新高1生を対象にしたものです。
新高1生が最初に取り組んでいく古文文法は、「用言の活用」です。
ただ、ここに入る前に文法用語の定義をしておかねばなりませんから、そちらの確認からしていきましょう。
文節と単語
中学校の頃に学んだ「国文法」の復習ですから、まずは簡単な例題から話を進めていきますね。
次の①~④を「/」で文節に分け、「|」で単語に分けてみましょう。
①私はとても速く走った。
②我いと疾く(とく)走りき。
③桜がきれいに咲くだろう。
④花をかしく咲かむ。
実際に書いてやってみましたか?
それでは、解答の確認です。
①私は/とても/速く/走った。〈文節〉 私|は|とても|速く|走っ|た。〈単語〉
文節と単語の違いは説明できますか?
精確な定義を覚えてもよいのですが、先につながりやすい定義をしておきましょうか。
文節:1文節の中に自立語は1つだけ。〈自立語がきたらその前で切れる〉
単語:言葉の最小単位。〈品詞の知識が必須〉
「自立語ってナンジャロ?」となった人のために寄り道です。
単語は「自立語(それだけ聞いて意味が分かる語)」と「付属語(自立語に意味を添える語)」に分けられます。
たとえば、「リンゴ」「おはよう」「しかし」「走る」は自立語、「や」「が」「た」「らしい」「より」は付属語です。
そして、自立語と付属語は、それぞれ「活用の有無」でさらに分けられます。
〇活用のある自立語→動詞、形容詞、形容動詞
〇活用のない自立語→名詞、副詞、連体詞、接続詞、感動詞
〇活用のある付属語→助動詞
〇活用のない付属語→助詞
それぞれの品詞の役割についてはここでは省略しますが、「活用」については定義しておきましょう。
活用:下にくる語や文中での働きによって、語形が変化すること
これらの知識を頭に入れておかないと、上に何も積みあがっていきませんから、しっかり確認しておきましょうね。
①に戻ります。
①に含まれる自立語は、「私」(名詞)、「とても」(副詞)、「速く」(形容詞)、「走っ」(動詞)です。
自立語の前に「/」が入っていますよね、これが文節です。
①に含まれる付属語は、「は」(助詞)、「た」(助動詞)です。
文節をさらに「|」で細分化すれば、単語に分ける作業が完了します。
②我/いと/疾く/走りき。〈文節〉 我|いと|疾く|走り|き。〈単語〉
お気づきかと思いますが、①の文を古文化したものが②です。
「き」が助動詞であることはいずれ分かってきますので、今は現代語が古文化する感覚に慣れてください。
「とても」が「いと」に、「速く」が「疾く」に対応していることが見抜けたら第一関門クリアです。
③桜が/きれいに/咲くだろう。〈文節〉 桜|が|きれいに|咲く|だろう。〈単語〉
「桜」(名詞)、「きれいに」(形容動詞)、「咲く」(動詞)が自立語、「が」(助詞)、「だろう」(助動詞)が付属語です。
④花/をかしく/咲かむ。〈文節〉 花/をかしく/咲か/む。〈単語〉
③の文の古文化ですね。
勘が良い方は、「桜」が「花」になっていることに気付いたと思います。
古文においては、文脈の中で特に指定がない限りは、「花」というと「桜」のことを意味するのです。
それだけ日本人の精神性に根付いていたということですね。
「む」は推量を意味する助動詞ですが、こちらについてもいずれ分かることなので今はスルーしておいてください。
活用
せっかく活用の定義についてお話したので、もう少し活用のお話をしておきましょう。
活用の定義は、①下にくる語や②文中での働きによって③語形が変化すること でした。
たとえば、中学校のときに、動詞に「ない」をつけてみたことはありませんか?
「走る」+「ない」→走らない
「うれしい」+「ない」→うれしくない
みたいなやつです。
あれは、「ない」という助動詞が下にあることで、上の活用語が「未然形」に変化した、という理屈なんですね。
下の語が上の語の活用形を決めているんですね。
ちなみに、中学校のころに習った活用形は、未然形、連用形、終止形、連体形、仮定形、命令形だと思いますが、古文では仮定形が「已然形〈いぜんけい〉」という名前に変わります。
こちらも確認しておきましょう。
下の語が上の語の活用形を決めるパターンについては確認しました。
では、「文中での働きによって」活用形が決まるパターンについても軽く確認しましょうか。
「係り結びパターン」と「疑問反語パターン」がありますが、ここでは「係り結びパターン」についてだけご紹介しますね。
係り結び
係り結びについて、覚えておられるでしょうか?
というか、中学校のころに習いましたかね?
文中に「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」という言葉が出てくると文末の語形が変わる、というアレです。
係り結びのポイントは以下の通りです。
①「こそ」のみ文末が已然形になる(他は連体形)
②「や」「か」のみ疑問(~だろうか)・反語(~だろうか、いや~〈主張を含む〉)の訳をとる(他は強調なので訳に影響なし)
・花ぞ咲く→「咲く」は連体形、訳は「花が咲く」
・花や咲く→「咲く」は連体形、訳は「花は咲くだろうか」「花は咲くだろうか、いや咲かない」
・花こそ咲け→「咲け」は已然形、訳は「花が咲く」、「花よ咲け」と命令の訳にしないよう注意
ひとまずは、上の3つの例を頭に入れておいていただければ結構です。
次回から、用言の活用の中身に入っていきます。