令和5年度:広島県公立高校入試【国語・大問3】解説

広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。

令和5年度の広島県公立高校入試【国語】、全体を通して好感をもてる作題でした。

令和5年度:広島県公立高校入試【国語・大問2】についてはこちらをご覧ください。

では、さっそく大問3の解説に入ります。

古文そのものの配点は3点という攻めた作りにはなっていますが、古文の趣旨を理解していなければ小作文が書けない作りになっています。

ここはかなり最低基準が緩く設定されそうではありますね。

1 適語補充

ア:A 歌 B 故


文章が評論なので、そもそも読み辛いよ!という声が聞こえてきそうです。

ただ、例年通り注釈はしっかり入っていますから、理解できる部分から趣旨を類推するという手順でいきましょう。

およそ( a )を見わけて善悪を定むる事は、殊に大切の事に候。ただ人毎に推量ばかりにてぞ侍る見えて候。その( b )は、上手といはるる人の歌をばいとしもなけれども讃めあひ、いたく用ゐられぬたぐひの詠作をば、抜群の歌なれども、結句難をさへとりつけて誹り侍るめり。ただ主によりて歌の善悪をわかつ人のみぞ候める。まことにあさましき事とおぼえ侍る。

「毎月抄」による。

空欄aの直後を確認すると、「~を見分けてよしあしを決めることは、とても大切なことだ」という価値判断がわかります。

ですから、「何を基準に見分けるのが大切なんだろう?」と考えながら読み進めてください。

すると、注釈がわんさか出てきます。

簡単にまとめると、「有名な作者の作品はダメダメでもほめちゃう、無名な作者の作品はすごくてもけなしちゃう。作者によって歌のよしあしをわけちゃうのはあきれたことだ!」という内容です。

注釈に書いてあるのでここは大丈夫ですよね。

「作者によって歌のよしあしをわけちゃうのはあきれたこと」なら、何でわけるのが大切なんでしょう。

そりゃ、歌そのものですよね、ということでAは歌に決まり、アかエが解答候補になります。

「ただ人毎に推量ばかりにてぞ侍ると見えて候」は訳しづらいですが、直訳気味にいくと「ただどの人も推量ばかりがあるように見えます。」ぐらいには読めそうで、その( b )は、とくるなら「理由」という意味をもつ「故」が適当だと判断できるでしょう。

少なくとも「主」は入らないよな、という判断で決めても大丈夫ですよ。

2 現代仮名遣い

いわるる


語頭以外の「はひふへほ」は「わいうえお」に読みかえましょう。

3 小作文

 有名な画家が描いた絵であれば、大したことがなかったとしてもすぐれた絵だと判断し、無名な画家が描いた絵であれば、優れていたとしても大したことのない絵だと判断することが、例として挙げられる。

 私は、作者が有名か無名かによって、作品の価値を判断することに反対だ。このような判断は、作品を評価しているとは言えない。大切なことは、自分自身で作品自体をしっかりと見て、価値を判断することだと考える。


昨年まで独立の大問だった小作文が古典の大問の中に吸収されたことで、趣旨を読み違えてしまうと大減点をくらう可能性のある爆弾に変貌しました。

が、肝心の趣旨にあたる部分には注釈がついているわけですし、問題文の中でも「『主』によって『善悪をわかつ』ということについて」と、親切に誘導をしていますからね。

中学3年生が古文を詳しく勉強していない以上、解答にたどり着くためのヒントは必ずあると信じて読むという姿勢が何より大事だと思います。

さて、古文の趣旨は「作者によって作品のよしあしを判断することの是非について」でした。

ここは当然「No」の立場で書くのが楽でしょう。

何より本文がそう言っているんですからね。

「Yes」の立場で書くと面白いですし、私はそちらで挑戦してみたいですが、これは「小論文」ではなく「小作文」です。

自身の主張の鋭さや非凡性をアピールしてみても、上限は9点、これ以上にはなりません。

頭をひねるだけ損なので、来年以上の受験生には「与えられた情報」と最低限の補足で書ききる、という考えをもっておいてもらいたいと思います。

以下、「Yes」の立場で書いてみた私の解答例です。


 一流料理店の料理であれば、大したことがなくてもおいしいと判断し、ファーストフードであれば、おいしかったとしても大したことはないと判断することが、例として挙げられる。
 私は、作者によって作品の価値を判断することは問題ないと考える。たとえば、「走れメロス」を単なる友情の物語として読むか、別の主張が込められた物語として読むかは、太宰治についての知識量によるだろう。作者の情報は作品の価値を支える尺度なのだ。


いかがだったでしょうか?

ここまで、令和5年度広島県公立高校入試国語を解説してきました。

ここ数年で一番の作題だったと思いますし、その分難度も上がったと思います。

けれども、文章量や記述字数そのものは減少したので、制限時間は適正なものになったとも思います。

受験生でこの解説を読まれた方は、まずは明日の自己表現をリラックスして乗り切れるよう頑張ってくださいね。

それを乗り越えたあかつきには、次の楽しいステージが待っていますよ。