令和5年度:広島県公立高校入試【国語・大問2】解説

広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。

令和5年度の広島県公立高校入試【国語】、全体を通して好感をもてる作題でした。

令和5年度:広島県公立高校入試【国語・大問1】についてはこちらをご覧ください。

では、さっそく大問2の解説に入ります。

複数資料化は例年のことですが、今年は初めて複数の文章が出題されました。

2つの文章の共通点、相違点を意識しながら読めたかがポイントです。

あ、「意識する」というのは、要点を端的にまとめたり、主張や理由に線を引いたりするなど、具体的な行動との結び付きが前提ですよ。

1 漢字の書き

ア:負荷

イ:暮

ウ:情熱

2 接続詞

エ だが


接続詞問題の鉄則は、前後の関係を確認することですよね。(もちろん、順接、逆接、並立・累加、対比・選択、説明・補足、転換という役割についての理解が前提です。)

空所の直前では、アラナノが保護区の設置に際して漁師を説得したという内容が書かれています。

空所の直後では、沿岸住民が保護区の設置に反対したという内容が書かれています。

ここでは逆接が適当で、エの「だが」が解答になります。

3 事実と意見

A:ア 事実 B:イ 意見 C:ア 事実 D:ア 事実


新傾向の問題ですが、問題なくいけたのではないでしょうか。

しいて言えば、Cがアラナノの会話文中にあり、アラナノが話しているから意見だ!とやってしまう場合があるかな、というくらいでしょう。

とはいえ、4つ合えば4点いただけるわけですし、Cを間違えたとしても3点はいただけているわけですから、サービス問題という側面が強そうです。

4 同義換言

①海洋保護区を設置し、②生物多様性を守ることによって③魚を増やし、④持続的に漁業で利益を得られる仕組み。


解答速報でも扱いましたが、この出題は鮮やかですね。

傍線部「地域社会が|保全を通じて|持続的に経済的な利益を得られる仕組み」について、アルカラが考えた同様の仕組みを答えさせる問題です。

「アルカラが考えた」とあるのですから、解答根拠は【文章2】の2、3、4段落のみになります。

そこでアルカラたち地域社会が、「何を保全することを通して」「どのような利益を得られる」のかを言い換えていけばよいわけです。

説明問題の基本は同義換言、同じ意味で分かりやすく言い換えることです。(この「分かりやすく」が曲者なのですが、ここでは省きます。)

漁獲量が増加する、というように具体的な内容を書いても問題ありませんから、安心してくださいね。

5 適語補充

①無秩序な観光の促進を行ってしまうと、②海洋の環境が劣化し、③保護区の美しい景観が失われる


解答速報では時間の都合で触れられませんでしたが、これ、実は厄介な問題です。

ダウインは保護区によって観光地化に成功したわけですが、【文章1】を踏まえると、「過度な観光の促進によって環境が劣化する」可能性があることにはすぐ気づけます。

空欄Ⅰの直前に、「【文章1】の内容を踏まえて」とあるわけですから、ここまではたどりつけます。

問題は、そのあとです。

「ダウインのその美しい景観の今後について考えてみると」とあるんです。

ということは、「無秩序な観光の促進を行ってしまうと、環境が劣化してしまう可能性がある」とだけ書いても、必要十分な解答にならないんですよ。

あくまでこの問題は、【文章1】を踏まえて【文書2】について考える問題なのですから、「ダウインの美しい景観が失われる可能性があること」まで踏み込んでいないと、減点は免れないでしょう。

【文章1】のみを根拠として解答を作成した場合、1~2点程度の減点があると考えておきましょう。


令和5年度:広島県公立高校入試【国語・大問3】についてはこちらをご覧ください。