線を引く意味
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
「大事なところに線を引こう」
今日日そんな雑な指導をする人がいるとは思いませんが、念のため「線を引く」ということの意味について考えてみようと思います。
なぜ線を引くのか①
私が線を引くこと(マーキング)を推奨する理由は単純明快で、「どこを重視するかの基準を作るため」です。
文章の内部にはグラデーションがあります。
筆者の主張を書いているのか、その主張に説得力を出すために反対の主張を紹介しているのか、はたまた主張の理由を書いているのか、具体例を挙げているのか…。
要は重視して読むべき場所と、確認に留めておくべき場所があるわけです。
読みに軽重をかけずに読んでいると、筆者が何を言いたいのか分からないまま、書かれている言葉だけが積みあがっていきます。
1つ例を挙げてみましょう。
人は自分の行動を100%自発的に、自分の意志で行っているわけではありません。知らず知らずのうちにまわりの環境に影響されながら行動していることが案外多いものです。たとえば、「寄りかかって休む」という行為ひとつとっても、たいていは寄りかかろうと思って壁を探すのではなくて、そこに壁があるから寄っかかってしまう。子どもの場合は特にその割合が高くなります、「いたずら」とはたいていそうしたものです。ボタンがあるから押したくなるし、台があるからよじ登ってしまう。環境に埋め込まれたさまざまなスイッチがトリガーになって、子どもたちの行動が誘発されていきます。
伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」/光文社新書
上の文章で最も筆者が言いたいことは何でしょうか?
ア、環境が影響して、子どもの行動を誘発することが多い。
イ、人は自分の行動のすべてを自分の意志で行っているわけではない。
ウ、子どもの行動の引き金になるのは、周りの状況である。
エ、人の行動に影響を与えるのは、環境であることが多い。
オ、環境に埋め込まれたさまざまなスイッチは、子どもの行動に影響を与える。
これ、結構多くの学生が間違えます。
線を引かずに読めるのであれば全く問題ないわけですが、線を引いていない子に「どこを重視するかの基準」が備わっていることはほぼありません。
「この文章で一番大事なことは?」
「なぜそこが大事だと思ったの?」
たった2つの質問に答えられるかどうかで、お子さんの状況はすぐ分かります。
正解はこの記事の最後に書いておきますね。
なぜ「そこに」線を引くのか
しかし、「大事なところに線を引きましょうね」と言うだけでは線は引けませんし、文章全体に線が引かれているなんてこともありえます。
大切なのは、上に書いた2つ目の質問です。
「なぜそこが大事だと思ったの?」
これに答えられない限りには、「どこを重視するかの基準」ができているとは言えません。
私もよく使う手法ですが、「レトリック(修辞/言葉の工夫)」に注目するのは、入り口としては正解です。
「しかし」と書かれていれば後ろに筆者の主張がくることは多いでしょうし、「たとえば」と書かれていれば具体例が後ろにくるわけですから、そこはさらっと読んでおくことが多いでしょう。
けれども、次のような場合はどうでしょうか?
状況①「しかし、そうではない。」という一文に線を引くべきか
状況②主張がつかみづらい文章を読んでいるとき、「たとえば」の後ろをさらっと読むだけでいいか
レトリックはあくまでレトリックですから、あくまで筆者の言いたいことを探すヒントにすぎません。
そこを絶対視してお粗末なマーキングを続けたところで、それは文章を理解しようと頭を使いながら読んでいることにはなりませんよね。
「なぜそこが大事だと思ったの?」
この発問の重要性はそこにあり、この発問がなされる国語の学習をしていますか?ということが言いたいわけですね。
だから、口頭試問なんです
私が現古館でやっていることは、ただただ「口頭試問」に尽きます。
無論、テクニカルな話もするにはしますが、私の指導で最も効果を発揮しているのはそこですね。
時間はかかりますし、疲れます。
けれども、そういった思考の積み重ねの先にしか、確かな読みなどありません。
それをやっているからこそ、中1時の平均偏差値が51だった生徒たちが、中3時に平均偏差値60を超える集団に育つのです。
中3時点で共通テスト現代文で9割をとる生徒が育つのです。
個別演習という形式をとっているからこそできる指導ですね。
テスト対策に過去問をやりましょう、なんてレベルの塾じゃありません。
必要があれば大学受験生に中学入試の問題だって解かせますし、高校受験生に大学入試の問題だって解かせます。
国語に学年なんか関係ない、言葉の難易度の調整だけしていれば、問われることの本質は小・中・高・大と変わらない、という立場です。
入塾テストを課している塾ではなく、むしろ国語を苦手だと言って通い始める生徒が多い塾がそれを言っています。
この方針をご理解いただける方とご縁をいただけることを楽しみにしております。
解答:エ