高校古文:解釈演習②
共通テスト対策の一環として、過去の入試で出題された解釈問題の解説を行います。
文脈が必要なものは適宜補いながら出題しますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
2021年共テ本試
(ア)えまねびやらず
①信じてあげることができない
②かつて経験したことがない
③とても真似のしようがない
④表現しつくすことはできない
⑤決して忘れることはできない
(イ)めやすくおはせしものを
①すばらしい人柄だったのになぁ
②すこやかに過ごしていらしたのになぁ
③感じのよい人でいらっしゃったのになぁ
④見た目のすぐれた人であったのになぁ
⑤上手におできになったのになぁ
(ウ)里に出でなば(法住寺に籠って喪に服している長家が)
①自邸に戻ったときには
②旧都に引っ越した日には
③山里に隠棲するつもりなので
④妻の実家から立ち去るので
⑤故郷に帰るとすぐに
解答・解説
(ア)④
「え~打消」は頻出の呼応表現で、不可能を示します。
ただ、この知識だけでは②しか切ることができません。(③の訳も微妙ですが、許される程度の言い換えでしょう。)
この問題では「まねぶ」の意味がカギになります。
「まねぶ」は、「学ぶ」の語源とよく言われるように、「真似する」「学ぶ」という意味がありますが、そこから転じて学んだことを「そのまま伝える」という意味も持ちます。
この段階で解答候補は③、④です。
「V+やる」は「遠くへ~する」「十分に~しきる」を示す補助動詞ですが、これを知らない場合は文脈で攻めるしかありません。
知は力なり。
いい加減に訳してしまいがちな部分が解答根拠になることはありますから、単語帳は入念に暗記していきましょうね。
(イ)③
解釈問題に敬語が出現した場合は最優先でチェックすべきで、敬語の種類を判断するだけで選択肢が絞れたりします。
今回は「おはす」という尊敬語の意味をとれていない①④が落ちますね。
「めやすし」は重要語で、「目安し」の漢字から連想し、「見た目の感じがよい」「見苦しくない」という意味を覚えておきましょう。
この時点で解答は③に決まります。
詠嘆の終助詞「ものを」はどの選択肢にも反映されていましたから、今回は決め手になりませんでした。
(ウ)①
「里」は「(宮中の人にとっての)自宅・実家」を示しますが、類似した「ふるさと」が「故郷」「旧都」を示しますし、「里」の現代語イメージから「山里」を連想してしまいがちなので、文脈無しにここの意味だけで切っていくのは難しいと思います。
「出でなば」を品詞分解すると、「出で」(ダ下二・未)「な」(完了「ぬ」・未)「ば」(接続助詞)となり、「未然形+ば」は順接仮定条件なので、「~ならば」という訳になりますね。
この訳が取れているのは①と②のみです。
「里」と「ふるさと」が区別できていれば①は選べますし、文脈が分かっていれば選びきれますね。