やっぱり読めていない
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
私は本ブログの中で、お子さんがいかに文章を読めていないかということをお伝えしているわけですが、本日はその具体的事例をお見せしようと思います。
現古館の現場から
以下の文章は、高校入試で実際に出題された文章の一部を引用したものです。
まずは我慢してご一読いただけますか。
人間は、本来的に社会的な存在です。じつは、個性化もまた社会化の産物であり、その様式の一つにすぎません。子どもたちは、「生来的な個性をもった自分」という自意識を、生まれながらに抱いているのではなく、むしろ社会生活の中で期待され、獲得していくのです。その意味では、いささか逆説めいた言い方になりますが、社会化に対して彼らがリアリティを感じていないのは、内閉的な感受性を強調するようなかたちで、現在の社会化が進んでいるからなのです。現代の子どもたちは、「自分らしさ」の根源を、そのオンリー・ワンの根拠を、自らの内面世界へと探求していくように、ほかならぬ社会から煽られています。皮肉にも、社会化に意義を認めないようなその新たな社会規範に、否応なく拘束され社会化されているのです。
土井隆義の文章による
現古館では、同じ文章・問題を扱っていても、各生徒が行う作業は異なります。
事例①:分からない言葉を調べる
〈生徒が調べた言葉〉
・内閉的
・規範
〈小林が発問した結果、追加で調べることになった言葉〉
・生来的
・逆説
・~めいた
・リアリティ
・皮肉
・意義
・否応なく
「分からない言葉」が分からない段階にある生徒には、「小林にきかれて答えられない言葉の意味を調べよう」という指示が下ります。
その指示で調べきれるだけで優秀だと思いますね。
調べる→再度調べなおし、というループから抜けるには、相応の時間がかかります。
この後に、調べた語を使って文をつくってみる、という段階もあるのですが、ここでは割愛します。
事例②:要約する
〈生徒(中3)の要約〉
個性化は社会化の一種で、現代の子どもたちは暗に自分らしくあれと仕向けられている。
〈小林のアドバイス〉
ここまで読めてるなら、「個性化は社会化の一種だ」だけで良いよ。
段階の見極め
同じ文章を読んでも、その理解には大きな差があるわけです。
これを、問題を解いて、解説を聞いて、分かったつもりになる。
これで文章が読めるようになるんですかね?
到達している段階にグラデーションがある以上、個々が乗り越えていくべき壁の順序は異なります。
その段階を見極めることが最優先になされるべきことです。
「文章を正確に読む」なんていうお題目は、到達すべき地点が定まってから掲げるものでしょう。
具体策のない理想論は、軽いのです。
