現代文ってどういう科目?
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
小・中学生が学ぶ「国語」という科目は、高校生になると「現代の国語」「言語文化」に姿を変え、「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」へと枝分かれしていきます。
時代によって名前と中身が変わってはいるのですが、ここでは大づかみに「現代文」ということでお話をしますね。
ただ、その前に私が大好きな映画についてご紹介させてください。
フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
フロリダと聞いて何を連想するか生徒に聞いてみました。
「ハリケーン」「洪水」
よくニュースを見ていますね。
今年の9月末に500年に一度と呼ばれる規模のハリケーンが上陸し、甚大な被害を及ぼしました。
が、そこじゃないんです。
ディズニーランドがあるんですよ。
ディズニーランドは、言わずと知れた「夢の国」です。
フロリダは、そこを訪れる観光客を相手にしたホテルが立ち並ぶ土地なんです。
しかし、「夢の国」の隣にはしっかりと現実があります。
映画のタイトルにもなっている「プロジェクト」とは、公営住宅を意味します。
そこに入れない人々は、何らかの経緯で犯罪歴があったり、戸籍がなかったり、就労証明がとれなかったりする人々です。
そういった人たちはどこに住むかというと、1週間単位で支払いをして雨露をしのぐ安宿、モーテルになります。
「フロリダ・プロジェクト」は、まさにそういったモーテルで暮らす人々をモデルにした映画なんですね。
知らないから撮る

「フロリダ・プロジェクト」そのものが大変よい映画なのでぜひご覧いただきたいんですが、私が強調したいのは、監督であるショーン・ベイカーの言葉です。
なぜ上述のような貧困層をモデルとした映画を撮ったのか、彼はこのように答えているんです。
製作を担当したクリス・バゴーシュが、中央フロリダへ引越すことになった母を手伝っていたんです。その時、ディズニー・ワールドのすぐ隣でモーテルに泊まっているのは観光客ではなく“家族”であることを知ったそうです。その事実を彼から聞いたことがこの映画をつくるきっかけになりました。
CINEMAS+
知らない世界を知った、だから撮る、と。
知らないから関係ない、としてしまう人とは真逆の感性ですよね。
でも、学習はこういうものであってほしいと思うんです。
知らないから知りたい、知ったらもっと知りたい…と、知的好奇心を満たすことが遊びになるような感覚です。
現代文の定義
さて、現代文のお話と結び付けていきますね。
まずは、「現代文」という科目を私がどう定義しているかをご紹介します。
現代文で扱う文章は、「近代以降の文章」とされます。
近代を明治時代以降だとすると、1868年以降に書かれた文章が「近代以降の文章」になるわけです。
現代文とは、「現代の文章を読むもの」と捉えられがちですが、実は150年以上の時間の幅が存在するわけです。
そして、当たり前のことですが、それらの文章は何らかの意図をもって書かれています。
私は、入試における現代文という科目を、
150年ほどの時間の幅をもち、何らかの問題意識のもと書かれた文章を読んで理解し、理解したという事実を採点者に示す科目
と定義しています。
知識と世界観
ここで確認しておきたいことが2点あります。
①現代が抱える諸問題について考える上で、近代とはどういう時代であったかという背景知識は必須
②筆者の意見に賛成するか反対するかはさておき、その問題意識は共有する必要があり、そのためにも知識が必要
おおざっぱに言ってしまえば、現代を理解するためには近代を理解しないとダメ、ということですね。
そしてそのためには、膨大な知識が必要、と。
そしてその知識を体系化し、世界観ともいうべきものを構築する必要がある、と。
「国語は日本語だから対策しなくてもできる」なんてレベルのものではないわけです。
文章の読み方、解き方を教えられる講師も多くはありませんが、今お話ししたことを伝えられる講師はさらに一握りですね。
成績向上のヒント
現代を知るために近代を知る。
それが今の自分たちにどのような影響を与えているのかを考える。
知らないから知る、知って自分ごととして考える。
言うほど簡単なことではありません。
が、その大変な道のりの中に、成績向上のヒントが隠れています。
読み方、解き方は大事、しかし何より知識・世界観が大事。
それがなきゃ、読めないでしょ、と。
知識がなければないほど時間はかかりますが、ここはぶらしちゃいけないところです。
当たり前のことなんですが、軽視されがちな部分でもありますから、改めて書いておいた次第です。
現古館はそういう立場をとっている塾だとご理解いただければと思います。