高校古文:比較形・抑揚形について確認しよう!
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
本日は、文の法性(話者の感覚・判断)を表す語の中でも、比較形・抑揚形を作る漢字について考えていきましょう。
比較形・抑揚形
比較形には、「如」「若」を用いる表現と、前置詞「於・于・乎」を用いる表現があります。
「如」「若」は、「もし」「ごとし」「しく」など、同じ読み方を多く持つ漢字ですが、「如」は「ゆく」、「若」は「なんぢ」という読み方をそれぞれ持っているので、こちらも確認しておきましょう。
また、「於」は比較的よく見かける置き字なので判断できる人は多いですが、「于・乎」など、見かける頻度が低い置き字を処理できないことがあるので、こちらも覚えておいてくださいね。
①S如A:「SはAのごとし」:SはAと同程度である→SはAのようだ
②S不如A:「SはAにしかず」:SはAと同程度ではない→SはAに及ばない
③無如A:「Aにしくはなし」:Aと同程度のものはない→Aが最も良い
④SV於C:「SはCよりV」 *置き字「於・于・乎」がCに「ニ・ト・ヨリ・ヨリモ」という読みを与える内、「ヨリ・ヨリモ」と読む場合に比較形を取ります。
抑揚形は基本形が重要なので、ここをまず暗記しましょう。
①A且B。況C(乎)。:「Aすら且(か)つB。いはんやCをや。」:AですらBなのだ。ましてCならなおさらBだ。
②A尚(猶)B。況C(乎)。:「Aすら尚(な)ほB。いはんやCをや。」:同上
③況於A乎。:「いはんやAにおいてをや。」:ましてやAはなおさらだ。
抑揚形において重要なのは、「況」の直前の内容です。
たとえば、「死馬且買之。況生者乎。」について考えてみましょう。
「死んだ馬ですら、これを買うのだ。まして生きている馬であればなおさらだ。」という訳になりますが、「生きている馬なら当然”買う”」という部分が強調されているわけです。
これを利用して、「死馬且買之。況【 】」と空所を用意しておいて、空所部分を類推させる問題が出題されることがあります。
古文における「Aだにまして【 】」や、反実仮想「Aせば(ませば・ましかば)【 】」など、空所を類推させる問題と似通っていますね。
対応できるようにしておきましょう。
確認問題
次の文の構文をとり、現代語訳をしなさい。
①百聞不如一見。
②傷人之言深於矛戟。
③莫若挙賢而任之。
④天下莫柔弱于水。
⑤庸人尚羞之、況於将相乎。
ヒント
①ひゃくぶんはいっけんにしかず。
②ひとをきづつくるのげんはぼうげきよりもふかし。
③けんをあげてこれににんずるにしくはなし。
④てんかにみずよりじゅうじゃくなるはなし。
⑤ようじんすらなほこれをはづ、いはんやしょうそうにおいておや。 庸人:凡庸な普通の人 将相:将軍や大臣
解答
赤:S 青:V 緑:C 黄:O
①百回聞くことは一度見ることに及ばない。 百聞不如一見。
②言葉は武器よりも人を深く傷つける。 傷人之言深於矛戟。
③賢者を推挙してその人に任せるのが一番よい。 莫若挙賢而任之。
④天下に水より柔らかいものはない。 天下莫柔弱于水。
⑤凡人ですらなおこれを恥じる。まして将軍や大臣ならなおさらだ。 庸人尚羞之、況於将相乎。