高校漢文:全部否定と部分否定について確認しよう!
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
本日は、文の極性(肯定/否定)を表す語の中でも、全部否定と部分否定について考えていきましょう。
全部否定と部分否定
「否定の文字は、直後の文字を否定する」
まずはこの原則をおさえておきましょう。
たとえば、「必不V」という形があると、「不」は「V」を否定しているわけです。
よって、「必ずVしない」、つまり「絶対にVしない」という全部否定になるんですね。
逆に、「不必V」という形であれば、「必ずVする」を否定するため、「必ずVするわけではない」という部分否定の訳になります。
「不」がどの字を否定しているのかを見抜ければ、全部否定と部分否定の区別は一撃です。
ただし、部分否定の場合は、全部否定の場合と若干読み方が異なることがあるので注意しましょう。
上の例であれば、「必不V」は「必ずV(セ)ず」、「不必V」は「必ずしもV(セ)ず」となり、部分否定の方が文字が多いのです。
他にも、以下のものが頻出ですから、読み方も確認しておきましょう。
①不常V→つねにはV(セ)ず:いつもVするわけではない
②不復V→またV(セ)ず:もう二度とVしない
③不敢V→あへてV(セ)ず:すすんで(決して)Vしない
④不俱V→ともにV(セ)ず:一緒にVしない
確認問題
次の文の構文をとり、現代語訳をしなさい。
①勇者不必有仁。
②家貧不常得油。
③家貧常不得油。
④客至、未嘗不置酒。
⑤今両虎共闘、其勢不倶生。
ヒント
①ゆうしゃはかならずしもじんあらず。
②いえひんにしてつねにはあぶらをえず。
③いえひんにしてつねにあぶらをえず。
④きゃくいたらば、いまだかつてさけをおかずんばあらず。
⑤いまりょうこともにたたかはば、そのせいともにいきざらん。
解答
赤:S 青:V 緑:C 黄:O
①勇者に必ず仁があるとは限らない。 勇者不必有仁。
②家が貧しく常に油を得られたわけではなかった。 家貧【不常得油。】
③家が貧しく常に油がなかった。 家貧【常不得油。】
④客が来たら、酒を置かないということはなかった。 客至、未嘗不置酒。
⑤今二匹の虎が戦ったら、二匹とも生きることはない。 今両虎共闘、其勢不倶生。