高校漢文:否定について確認しよう!

広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。

本日は、文の極性(肯定/否定)を表す語、特に否定について考えていきましょう。

否定形・二重否定

漢文の否定形に用いる漢字は複数ありますが、それぞれ性質が異なります。

ここをおさえておくと、二重否定の意味がとりやすくなりますから、セットで覚えておきましょうね。

①不・弗→「ず」:助動詞として用い、動作・状態・性質を否定します。(~ない)

②非→「あらず」:動詞として用い、判断・一致を否定します。(~ではない)

③無・莫・勿→「なし」:動詞として用い、存在を否定します。(~はない)

→「なかれ」:否定の命令形(禁止)を作ります。

④未→「いまだ~ず」:助動詞として用い、動作の完了・経験を否定します。(まだ~ない)


二重否定の基本形は以下の通りです。

意味の違いに留意して、覚えておきましょう。

①非不V→Vしないわけではない(Vする)

②非無S→Sがないわけではない。(Sがある)

③無不V→Vしないものはない(みんなVする)

④無非C→Cでないものはない(みんなCである)

二重否定は強い肯定で訳すため、副詞を使うと訳しやすいということも知っておくとよいでしょう。

また、選択肢問題の場合は、二重否定をそのまま訳している場合と、強い肯定で訳している場合とがありますので、注意が必要です。

確認問題

次の文の構文をとり、現代語訳をしなさい。

①不知老之将至。

②非不悪。

③天下莫不知。

④寧為鶏口、無為牛後。

⑤父母之年、不可不知也。


ヒント

①おひのまさにいたらんとするとしらず。

②にくまざるにあらず。

③てんかしらざるはなし。

④むしろけいこうとなるも、ぎゅうごとなるなかれ。 *故事成語。「寧」は仮定、「鶏口」は小さな集団の長、「牛後」は大きな集団の末席を示す。

⑤ふぼのとし、しらざるべからざるなり。

解答

赤:S 青:V 緑:C 黄:O

①老いがまさに迫ってきていることを知らない。 不知老之至。

②嫌わないわけではない。 不悪。

③天下の誰もが知っている。(天下に知らない者はいない) 天下不知。 *存在を示すVS構文ですが、天下をSと見て二重否定をとっても問題ありません。

④小さい集団の長になったとしても、大きい集団の末席になってはならない。 寧鶏口、牛後。

⑤父母の年齢は知っておくべきだ。 父母之年、不可不知也。