高校古文:助動詞「き」「けり」の識別と確認問題

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

引き続き、古文文法の鬼門、助動詞の識別についての記事を配信いたします。

本日は、連用形接続の助動詞「き」「けり」について扱います。

「き」「けり」の接続と識別

〇「き」の接続:連用形接続

助動詞「き」は、「連用形接続の助動詞」です。


〇活用(「き」→特殊パターン)

せ|〇|き|し|しか|〇

*助動詞「き」の未然形「せ」は、反実仮想「せば~まし」でしか出てきませんから、こちらも併せておさえておきましょう。


☆「き」の意味

・(体験)過去〈~た〉

*カ変・サ変のみ、未然形につくことが多い【せし・せしか・こし・こしか】

*「し」の識別:助動詞「き」連体形・サ変動詞連用形・副助詞「し」


〇「けり」の接続:連用形接続

助動詞「けり」は、「連用形接続の助動詞」です。


〇活用(「けり」→ラ変パターン)

けら|〇|けり|ける|けれ|〇


☆「けり」の識別基準

①(伝聞)過去〈~た/たということだ〉

②詠嘆:和歌・会話文・手紙の中にある場合〈~だなぁ、~なことだよ〉

*「けらし」:「ける」+「らし」で①過去推定 ②過去詠嘆

*「けれ」の識別:助動詞「けり」已然形・形容詞本活用已然形活用語尾

確認問題

1、傍線部について、例にならって文法的に説明せよ。(九州大)

十六日に(さん)()(ちょう)焼かれしに、誰々も参りしかども、頭中将ばかり長橋へも昇らで出でけり。

*三毬杖:正月十五日・十八日に行われた火祭り。

例:受身の助動詞「る」の未然形


2、次の空欄に入る助動詞「き」の組み合わせを選べ。(早稲田大)

・そこに古老の者の侍り【 A 】を語らひて、昔のことを尋ね侍りしついでに、

・かの井手の大臣の堂は、一年焼け侍りに【 B 】。

・また、かの井手川の汀につきて隙もなく侍り【 C 】ば、花の盛りには黄金の堤などを築き渡したらむやうにて、他所にはすぐれてなむ侍り【 D 】。

1 A:き   B:し   C:しか  D:き

2 A:し   B:しか  C:せ   D:し

3 A:しか  B:き   C:しか  D:き

4 A:し   B:き   C:しか  D:し

5 A:き   B:しか  C:せ   D:し


3、傍線部を「けり」の用法に注意して口語訳せよ。(横浜国立大)

内にまゐりて、御鷹の失せたるよし奏したまふ時に、帝、ものものたまはせず。…たいだいしとおぼしたるなりけりと、われにもあらぬ心地して、かしこまりていますかりて、「この御鷹の、もとむるに、侍らぬことを、いかさまにかしはべらむ。などかおほせごともらまはぬ」と奏したまふ。


4、空欄には、過去の助動詞「き」が入る。活用させて記せ。(関西学院大)

来【  】ど、

解答・解説

1,過去の助動詞「き」の已然形

接続助詞「ども」は已然形に接続し、「参り」というラ行四段動詞未然形に接続していますから、一撃です。


2,4

A→格助詞「を」は体言・連体形に接続するので、「し」で確定です。この時点で解答は2か4になります。

B→文末にあり、係り結びも疑問・反語の副詞もありませんから、終止形。よって、解答は4で確定です。

C→接続助詞「ば」は未然形に接続して順接仮定条件(~ナラバ)を、已然形に接続して順接確定条件(~ト、ノデ、トコロ)を表します。「井手川の堤に隙間もなく(花〈款冬:フキ〉が)生えておりましたので、その花の盛りには黄金の堤などを築き渡したようで~」という文脈なので、已然形です。

D→「なむ」から係り結びが起こっているので連体形「し」になります。


3,怠慢だとお思いになっているであろうなぁ。

「と」「など」「とて」の上には会話文や心中思惟が隠れていることが多いので、「」を補ってみるクセをつけましょう。

会話文中の「けり」は詠嘆ですから、そちらを訳出します。

「たいだいし」に漢字をあてると、「怠々し」となり、「不都合だ」「いい加減だ」「怠慢だ」を示す重要語です。

尊敬の本動詞「思す」、存続の助動詞「たり」、断定の助動詞「なり」もしっかり訳出しましょうね。


4、しか

接続助詞「ど」は已然形に接続するので、「しか」で一撃です。

ちなみに、「来」の読みは「こ」ですね。