高校古文:助動詞「まし」の練習問題
広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。
引き続き、古文文法の鬼門、助動詞の識別についての記事を配信いたします。
本日は、未然形接続の助動詞「まし」の練習問題を2題扱います。
練習問題
1、傍線部「まし」は、文法上、上の語句のどれに呼応しているか選べ。(早稲田大)
つれなき世のあはれさもみづから聞え合せたくなどあれば、例のうち、寝るほどの鐘の響きに、人知れず頼みをかくるも、思へばあさましく、世の常ならずあだなる身の行方、つひにいかに果てんとすらんと、心細く思ひつづくるにも、ありしながらの心ならましかば、浮きたる身のとがもかうまでは思ひ知らずぞ過ぎまし。
イ:つひに ロ:いかに ハ:心細く 二:ましかば ホ:かうまでは
2、傍線部は、「~ましかば」と言いさした形で終っている。下に省略された言葉を補って現代語に改めよ。(北海道大)
(光源氏は晩春のある日、北山で可憐な紫の君を垣間見て、ぜひ自宅に引きとりたいと希望していた。だが、祖母尼上は紫の君の幼なさを理由に固辞している。)
尼上「いとかたじけなきわざにもはべるかな。この君だに、かしこまりも聞こえたまひつべきほどならましかば」とのたまふ。あはれに聞きたまひて、「何か浅う思ひたまへむことゆゑ、かうすきずきしきさまを見えたてまつらむ。」
解答・解説
1、二
問われ方は特殊ですが、「せばーまし」「ませばーまし」「ましかばーまし」という呼応表現を覚えていれば一撃ですね。
早稲田大の過去問ときくと身構えてしまうかもしれませんが、古文文法を問う問題については、基本をおさえていれば対応可能です。
2、せめてこの君が、しっかりとお礼を申し上げなさることができるご年齢であれば良かったのに。
「ましかば」がある以上、「ーまし」の内容を補う必要があります。
一般的に、「ーまし」が省略されているときには、「よからまし」という語が隠れていることが多いのですが、今回のケースもそうなっています。
現代語訳の問題は、まずは品詞分解をし、直訳気味に訳してみて、意味の通りづらい箇所を補足していくのが基本方針です。
こ/の/君/だに/かしこまり/も/聞こえ/たまひ/つ/べき/ほど/なら/ましか/ば
こ:代名詞
の:格助詞(連体修飾格)
だに:副助詞(限定)
かしこまり:名詞
も:係助詞
聞こえ:謙譲の本動詞「聞こゆ」(ヤ下二・連用)
たまひ:尊敬の補助動詞「たまふ」(ハ四・連用)
つ:強意の助動詞「つ」(終止)
べき:可能の助動詞「べし」(連体)
ほど:名詞
なら:動詞「なる」(ラ四・未然)
ましか:反実仮想の助動詞「まし」(未然)
ば:接続助詞
特に、副助詞「だに」や強意の助動詞「つ」の訳出を意識すると、よい解答になります。
解答欄が広い場合は、「~なら良かったのに(反実仮想)」の後に、実際にはどうなのか、という内容を付け足すことで字数調整を行えます。
「~なら良かったのに。でも実際は幼い子なので良い返事できなくてごめんね!」みたいな感じですね。
1つのテクニックとして覚えておいてください。