高校古文:助動詞「む」「むず」の練習問題

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

引き続き、古文文法の鬼門、助動詞の識別についての記事を配信いたします。

本日は、未然形接続の助動詞「む」「むず」の練習問題を1題扱います。

練習問題

 問:傍線部a~dの「ん」の文法的意味の組み合わせとして正しいものを選べ。(センター試験)

・軒端の梅の、かつ咲きそめたるを、女の童折りて、「君ならでは」と見せたりしかば、顔近く引き寄せ、「うれしげにも咲きたる花かな。色よりも香こそあはれなれ。我はかく、今日明日とおぼゆるを、げにこの世のほかの思ひ出これならaかし。桜はまだしくて見ざらんぞ口惜しき。」など、思ひ入れたる顔のにほひ、あらぬ人なれど、さすがになつかしからずはあらず。  

・翁と母、手を捕らへて、呼び生け呼び生け、「なほ言はまほしからbことあらば、のたまへ。心のうち晴るけやらぬは罪深し」など言へば、うちうなづき、「我をば煙となし給ふな。それなん心にかかる。先立ちて二人の親に嘆かせたてまつらん心憂さ、黄泉路もやすくは行きやられじ。また病ひ少し緩みある折々は、辞世の歌、心にかけしを詠みおかず成りぬると、姉君のただならずおはして、近きほどに生ませ給へらん稚児の、めづらかにをかしからん顔つき見ずなりなん、いとど残り多かる。さならでは何の思ひおくことあらん。かまへて亡骸を損なはでをさめてc。もしたがひもぞする」とうしろめたげなり。

・四、五日ありて、初桜の面白きを人のもとよりおこせたるに、とく、ゆかしがりつるものを見せdと、花瓶に挿しおきたれば、うちながめて、「はや咲きにけり。春のゆくへも知らぬ間に」と、言の葉ごとに偲ばるべきふしをとどめ、はかなき筆のすさみにも、あはれなることをのみ書きおけるは、長き世の形見にも見よとなるべし。

1 a:婉曲  b:推量  c:勧誘  d:意志    

2 a:推量  b:婉曲  c:勧誘  d:意志 

3 a:推量  b:意志  c:婉曲  d:勧誘

4 a:意志  b:婉曲  c:勧誘  d:推量

5 a:婉曲  b:推量  c:意志  d:勧誘

解答・解説

解答:2

a → 「げにこの世のほかの思ひ出これならんかし」の「思ひ出」が主語なので、3人称主語ですね。

ですから、まずは推量の訳でとってみましょう。

すると、「本当に現世での最後の思い出はこれだろうね」と訳出でき、意味が通ります。

よって、解答は「2」か「3」に絞られます。

b → 「こと」という体言につながっているので、婉曲で確定です。

この時点で解答は「2」ということになります。

c → 「かまへて亡骸を損なはでをさめてん」とあります。

「決して(私の)亡骸を火葬しないで納めておいてください」と、2人称主語に対してお願いしている文脈ですから、「適当・勧誘」の訳がふさわしいです。

d → 「早く(娘が)見たがっていたものを見せたい!」という親(一人称主語)の気持ちが書いているわけですから、意志の訳が適当ですね。

これはセンター試験の過去問ですが、識別基準を覚えておくと、選択肢の比率に注目するだけで解答候補が絞られたりします。

選択肢問題を解く際はこういったバランス感覚をもっておくことも必要ですよ。