令和4年(2022年)度:広島県公立高校入試国語解答速報【大問4】 

広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。

この記事では、令和4年(2022年)度:広島県公立高校入試国語・大問4の解説を致します。

よろしくお付き合いください。

それでは、始めます。

解答作成の手順

限られた時間の中で、複数の資料をふまえて250字の小作文を作成するという作業は、中学生にとってそう簡単なことではありません。

しかし、こと広島県公立高校入試においては、【解答への誘導が高いレベルでなされている】という点で、出題されるに足る良問になっています。

大問1や大問3については思うところが多かった令和4年度広島県公立高校入試でしたが、大問4の出来栄えには脱帽するばかりでした。

広島県公立高校入試の大問4の解答を作成する際には、まず〔問い〕を確認するクセをつけましょう。

いきなり資料や会話文にあたるのではなく、何について答えるのかということを把握した上で、そのヒントを資料や会話文から探すためです。

方針なく資料や会話文をすべて読み込んでいると、時間がいくらあっても足りませんからね。

今回求められているのは以下の内容です。

①読み聞かせに使う絵本は、「図鑑のような絵本」がよいと主張する

②話し合っている班員の間で、合意を形成する必要がある

もうお気づきでしょう。

赤字にしてある「合意を形成する」という要素は、広島県公立高校入試において初出のキーワードです。

ここで、広島県教育委員会が明示している、教育施策の〈目指す姿〉を確認してみましょう。

 一人一人が,生涯にわたって主体的に学び続け,多様な人々と協働して新たな価値を創造する人づくりの実現

「広島県 教育に関する大綱」に基づく教育委員会主要施策実施方針

重要な文言は「多様な人々と協働して」という部分ですね。

世の中は、「物語」「図鑑」というたった2種類の絵本で議論されるほど単純なものではなく、途方もない数の「意見」で溢れかえっています。

多様性の時代。

けれども、「多様性」と共存する時代だからこそ、それらをすり合わせた「合意の形成」、それに基づいた「協働」が重要になってきます。

高校入試らしく、話題は親しみやすいものですし、会話文に出てくる人物の意見も「多様性」とは程遠いですが、民主主義の入り口に立つ上では有効な設問だと、私は思います。


さて、「合意の形成」を目指す主張は、どういった方法でなされる必要があるでしょうか。

重要なのは、以下の2点です。

①比較優位を示すことを優先するのではなく、自身の主張の魅力を最大限アピールする

②他者の意見をふまえ、共通点を探る

「合意の形成」を目指す以上、そこには他者の主張への敬意や配慮をもつことは必須条件であり、「どうにか言い負かしてやろう」という態度はとるべきではありません。

たしかに、ある程度の「押し」がなければ議論が平行線のまま、ということも起こりえるでしょうが、あくまで教育的配慮がなされた「公立高校入試」の世界ですからね。

目指すべきなのは、上記のような主張展開です。


では、実際に会話文を見ていきましょう。

数人の生徒がやんややんやと意見を戦わせていますが、共通のキーワードが複数回出てきていることに気づけたでしょうか。

和田「知的好奇心が増す」→図鑑

野村「わくわくするような」→物語

本多「好奇心が高まったりする」「わくわくするような」→物語

意見の細部こそ違えど、読み聞かせの対象である子どもたちの立場に寄り添い、楽しませようとしている点では同じなのですね。

この共通点に触れながら、図鑑の立場の魅力を、資料を用いながらアピールすること。

これができれば、十分に及第点となったはずです。

日本語的な誤りは最低限に、上記の方針をふまえて解答を作成していただきたいと思います。