高校古文:本歌取り・体言止めの確認問題
広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。
本日は、長く書いてきました和歌の修辞法のラスト、本歌取りと体言止めについて配信いたします。
このあたりになると、出題例も極めて少なくなりますので、スピーディーに確認しておきましょう。
本歌取りとは、
①有名古歌や漢詩、物語の一部を詠みこみ、
②新たな世界を展開させる修辞法
のことを言います。
有名じゃない和歌を取っても、共通認識が形成されないので、余韻・余情は生めません。
何をいってらっしゃるのかしらん、と思われて終わりです。
端的に言えば、制限のあるパクりだと思ってください。
特に「新古今和歌集」に例が多いです。
例えば、
本歌:こころあらむ 人に見せばや 津の国の 難波あたりの 春の景色を(平安時代)
→ 春は最高です
本歌取り:津の国の 難波の春は 夢なれや 蘆の枯れ葉に 風渡るなり(鎌倉時代)
→ 冬は寂しいです
⇒ 季節と心情を転換させています
本歌:み吉野の 山の白雪 つもるらし ふるさと寒く なりまさるなり(平安時代)
→ 冬は雪がすごいです
本歌取り:み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり(鎌倉時代)
→ 秋は砧(きぬた)を打つ音がすごいです
*衣をやわらかくして光沢を出すために、太い棒で衣をたたきます。
⇒ 季節と感覚を転換させています
本歌:君をおきて あだし心を わが持たば 末の松山 浪も越えなむ(平安時代)
→ 恋はいいものです
本歌取り:霞立つ 末の松山 ほのぼのと 浪にはなるる 横雲の空(鎌倉時代)
→ 自然はいいものです
⇒ 恋を自然に、自然を恋に転換しています
体言止めにも当然効果があります。
①結句を体言で止めることで、
②余韻・余情を表し、
③読み手にその後を想像させる修辞法 です。
たとえば、
心なき 身にもあはれは しられけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ
春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
が挙げられます。
確認問題
1、《 》部の歌は『古今和歌集』の「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」をもとにして作られたものであるが、このようにして作られた和歌の修辞法を何というか。次の中より選び、符号で答えなさい。(和洋女子大学)
《ほととぎす花たちばなの香をとめてなくはむかしのひとや恋しき》
ア:枕詞
イ:掛詞
ウ:縁語
エ:本歌取り
オ:対句
2、《 》部「取られたり」とあるが、古い歌の表現を自分の歌に引用する、このような手法を通常和歌で何と呼ぶか。その名称を記せ。(甲南大学)
末句は『古今集』の「陸奥はいづくはあれど塩釜の浦漕ぐ舟の綱手かなしも」とあるを《取られたり》。
解答
1、エ
2、本歌取り