高校古文:折句・沓冠の確認問題
広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。
本日は、折句と沓冠の確認問題を配信いたします。
似ている修辞法なので、まとめて理解しておきましょう。
折句とは、
①各句の頭文字をつなぐと
②物や土地の名前が隠して詠まれている
という修辞法です。
例えば、
どうしよう 楽に100点 得たいけど もう彼はいない 無理そうだ
この和歌の中には、「ドラえもん(どらえもむ)」が隠れていますね。
沓冠(くつかむり)は、端的に言って「折句の往復版」です。
①各句の頭文字をつないで一つ、
②各句の最後の文字をつないで一つ
③意味のある語が現れる
という修辞法です。
以下は、吉田兼好が友人の頓阿に送った和歌が有名なので、見ておきましょう。
兼好
よも涼し ねざめのかりほ た枕も ま袖も秋に へだてなきかぜ
→ 「よねたまへ(米給へ)」「ぜにもほし(銭も欲し)」
大変図々しいですね笑
これは、最後の文字を「読み返しているパターン」だ。
最後の文字を「順番に読んでいくパターン」もあるので注意してください。
頓阿
よるも憂し ねたくわが背こ はては来ず なほざりにだに しばし訪ひませ
→ 「よねはなし(米は無し)」「ぜにすこし(銭少し)」
大変景気が悪い者どうし、類は友を呼ぶということでしょうか。
和歌そのものはカップルみたいにふるまうギャグで遊んでいるのですっが、裏のメッセージは切実です・・・。
一応訳しておきますね。
《独り寝の秋の夜、あなたのいない私の傍らには、涼しい秋風が吹いて目が覚めてしまいました》
《つらい夜、あなたは全く来てくれません。いい加減な関係でもいいから、たまには来てくださいよ》
確認問題
1、《 》部の「折句」は物の名を詠みこむ和歌の技法である。「からごろも」の和歌に詠みこまれている言葉は何か。一語を平仮名で記せ。(福岡大学)
からごろも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
~中略~
《これは古今和歌集でも希な「折句」の作であることに気付く。》
2、「からごろも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ」と同じ折句の技法で詠まれた歌を、次の中から一つ選べ。(明治大学)
1:いつはとは 時はわかねど 秋の夜ぞ 物思ふ事の 限りなりける
2:憂き事を 思ひつらねて 雁がねの 鳴きこそわたれ 秋の夜な夜な
3:おく山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき
4:小倉山 峰立ち鳴らし 鳴く鹿の 経にけむ秋を 知る人ぞなき
5:竜田姫 手向くる神の あればこそ 秋の木の葉の 幣と散るらめ
3、文中の和歌は沓冠(沓冠とは、各句の最初の文字を順番につなぎ、更に各句の最後の文字をつないで、意味のある言葉にあるものである。濁点は考えに入れない。)の技法を用いたものである。この和歌に隠された言葉は何か。平仮名で答えよ。(愛知県立大学)
逢坂も はては往来の 関もゐず 尋ねて訪ひこ 来なば返さじ
という歌を、同じやうに書かせたまひて、御方々に奉らせたまひけるに、この御返事を方々さまざまに申させたまひけるに、広幡の御息所は、薫物をぞまゐらせたまひたりける。
解答・解説
1.かきつばた

2.4
「をみなへし(女郎花)」は秋の七草の一種です。
これも折句で頻出なので、暗記してしまいましょう。

3、あはせたきものすこし
兼好たちのパターンのように、各句の最後の文字を読み返してみると、「あはせたきじこずのも」となり、さっぱり意味が分かりませんね。
では、最後の文字を順番に読んでみましょう。
すると、「あはせたきものずこじ」。
濁音は考えない、とわざわざ書いてくれていますから、「あはせたきものすこし(合わせ薫物少し)」となりますね。
このメッセージに気付いて、広幡の御息所だけが帝に合わせ薫物を献上しました。
これ、すごいと思いませんか?
《男女の仲をも隔てる逢坂の関もついに今夜は、行き来を咎める関所の門番もいません。私を訪ねて来てください。来てくれたら、もう帰さないつもりだよ という歌を、同じように帝がお書きになって、后妃たちにそれぞれいっせいにお差し上げになったところ、このご返事を后妃の方々はそれぞれ様々にご返歌申し上げなさったが、広幡の御息所だけは、薫物を差し上げなさったのだった。》
頭の回転とんでもないですね、すごくないですか?
たしかに、ここでは「すごい」という文脈だと思いますが、頭の回転が速すぎることで、とんでもない目にあった人もいますよ。
以下は、三国志演義に出てくるエピソード。
曹操という君主は、人材マニアとして有名で、有能な人材をこよなく愛する人です。
けれど、自分の考えをなんでも見透かして先回りしてしまうくらい有能な人は、むしろ恐れて遠ざける傾向があります。
一番ひどい場合だと、首を飛ばしてしまったことも…!
やれやれですね…。