高校古文:序詞の確認問題②
広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。
前回に引き続き、序詞の確認問題を解いていきましょう。
確認問題
1、A、Bの歌に共通して用いられている和歌の修辞法は何ですか。最も適当なものを一つ選べ。(龍谷大学)
A:波間なき 隠岐の小島の 浜びさし 久しくなりぬ 都へだてて
B:木枯らしの 隠岐のそま山 吹きしをり 荒くしをれて 物思ふころ
①枕詞
②序詞
③掛詞
④本歌取り
⑤見立て
2、文中の和歌で、比喩を兼ねた序詞が用いられているものは、どれか。1~5から選べ。(早稲田大学)
1、老いぬれば さらぬ別れも ありといへば いよいよみまく ほしき君かな
2、世の中に さらぬ別れの なくもがな 千代もとなげく 人の子のため
3、人の親の 心は闇に あらねども 子を思ふ道に まどひぬるかな
4、鏡山 いざたちよりて みてゆかん 年へぬる身は 老いやしぬると
5、しらゆきの 八重降りしける かへる山 かへるがへるも 老いにけるかな
3、「」部は、和歌の上の句で、この区全体が下の句にかかる序詞となっている。この和歌の下の句として正しいものを、次のア~オの中から選べ。(跡見学園大学)
「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草」
ア:くる年ごと に若く見えつつ
イ:下葉残らず 色づきにけり
ウ:昔の人の 色ばかりこそ
エ:あやめも知らぬ 恋もするかな
オ:目にはみえねど 香こそしるけれ
解答・解説
1、②
序詞の範囲でやっている確認問題なので答えは序詞!という判断は恐ろしいのでやめておきましょう。
枕詞や掛詞であれば、覚えておくべき知識で処理ができるはずですが、今回はそれらにあたるものはありませんから、①②を切ります。
次に、④本歌取り⑤見立てですが、出題例はかなり少ない修辞法です。
これらを最初に検討するのは効率的ではありません。
ですから、「比喩を示す”の”」「音の反復」「掛詞」で発見する序詞ではないか?とあたりをつけます。
上記の基準をもって和歌を確認していくと、「浜びさし」と「久し」、「吹きしをり」と「しをれて」がそれぞれ類似音の反復なので、序詞だと確認ができますね。
暗記で処理ができるもの → 発見するためのヒントを用いて処理ができるもの → 残った修辞法 の順序で検討を進めていくのがおすすめです。
A:波が絶える間もない隠岐の小島の浜辺の小屋が建ってから長い時間が経ったように、長い時間が経ったことだよ。私が都を離れて。
B:木枯らしが、隠岐のそま山(植林された山)を吹いて、その木をしおれさせているように、私もひどくしおれてもの思いするこの頃であるよ。
2、5
1の問題でも確認した基準を用いて発見していきます。
ここでは「音の反復」でかたがつきますね。
「かえる山のように、かえるがえるも年老いた」という比喩になっていることがわかるでしょう。
1、老いてしまうと避けられない別れもあるというので、ますます逢いたいあなただよなぁ。
2、この世には避けられない別れがなければいいのになぁ、親の命が千年も続けばいいのにと嘆く人の子のため。
3、人の親の心は闇のように分別のないものではないけれども、子を思うと暗闇の道に迷うように、わけもわからなくなってしまうなぁ。
4、鏡山、さぁ立ち寄って鏡山の鏡に自分の姿を映して見ていこう、年を経た自分の身は老いてしまったかと。
5、白雪の幾重にも降り積もったかえる山ではないけども、その「かえる」のように、かえるがえるも(かえすがえすも)老いてしまったなぁ。
鏡山って洒脱な名前ですね?
「洒脱」とは洒脱な言い回しですね。
でも確かにそう。
作者の大友黒主(六歌仙の一人)が滋賀の豪族なので、今回の和歌に出てきている鏡山は滋賀県にある歌枕なのですが、実は「鏡山」は全国各地に存在します。
他の有名どころで言えば、「松浦佐用姫の領巾ふり伝説」が残る佐賀県の鏡山でしょう。
異国へ旅立つ夫を、高い山の上で白い領巾を振りながら見送った、というお話です。
1997年センター試験本試験「松浦宮物語」にも出てくるエピソードですね。
「鏡山」という名前は、神功天皇が山頂に鏡を奉納したことからきたのだとか。

3、エ
序詞があるという前提から考えると、上の句の形から考えて「音の反復」という基準で考えていくしかありません。
こちらは「高校古文:序詞をみつけてみよう②」でも扱った和歌ですから、現代語訳は省略します。