高校古文:序詞の確認問題①

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

今回は「序詞」について、実際の入試問題を用いて確認していきましょう。

確認問題

1、次の文中の空欄に適切な語句を入れよ。(熊本県立大学)

A・Bの歌には序詞が用いられている。序詞とは、ある語句を導く前置きのことばで、ここでは(   )がそれに相当する。

A:安積山 影さへ見ゆる 山の井の 浅くは人を 思ふものかは

B:安積山 影さへ見ゆる 山の井の 浅き心を 我が思はなくに

ア:第一句

イ:第一・二句

ウ:第一~三句

エ:第一~四句


2、〈 〉部は、右の和歌にとって、修辞上どのような働きをしているか。次のa~eの中から、適当なものを一つ選べ。(関西学院大学)

〈み狩野に 朝立つきじの ほろほろと〉 泣きつつぞ経る 身を恨みつつ (源賢法眼集)

a:枕詞

b:掛詞

c:縁語

d:本歌取り 

e:序詞


3、次の和歌に用いられている修辞技法の組み合わせを選びなさい。

思ひかね 心は空に みちのくの ちかのしほがま ちかきかひなし

*ちかのしほがま:千賀の塩竈。陸奥の歌枕。

①枕詞と序詞

②掛詞と序詞

③掛詞と縁語

④枕詞と縁語

解答・解説

1、ウ

序詞の基本で確認した通り、「7音以上」という条件に当てはまらないアは最初に切っていきましょう。

次に、序詞を探す基本に立ち返ります。

すると、「~のように」と訳せる「の」が発見できますから、「第三句」で終っているウが解答だと判断できますね。

Aは「安積山 影さへ見ゆる 山の井の 」が「浅くは」を導く序詞、Bは「 安積山 影さへ見ゆる 山の井の 」が「浅き」を導く序詞となります。

A:水が浅くて、(自分の姿に加えて)安積山の姿までも映って見える山の囲(湧き水)が浅いように、そんな浅い心であなたを愛していたでしょうか、いやそんなことはございません。

B:安積山の姿までも映し出す清らかな山の井、浅いその井のような浅はかな心で、私がお慕いしているわけはありませんのに。


2、e

〈〉の長さから考えても序詞しか考えらないとは思いますが、確認していきましょう。

ここでは、序詞を見つけるときのヒント、「掛詞」の存在に注目します。

「きじのほろほろと泣き」は自然を示しており、「泣きつつぞ経る身を恨みつつ」は人間の心情を示しているため、後者が主題となりますよね。

「なき」が漢字になっているので見つけ辛かったかもしれませんが、「鳴き」と「泣き」の掛詞になっているわけですね。

つまり、〈〉部が「泣き」を導く序詞ということになります。

貴人の狩りで驚いて朝飛び立つ雉がほろほろと鳴いているように、自分の身の上を恨みながら泣き過ごしている我が身であることだよ。

桃太郎の相棒。その戦闘力や如何に?

雉って「ほろほろ」と鳴くんですか?

「けんもほろろ」(冷たく突き放す)という言葉がありますが、どちらも雉の鳴き声の擬音語だと言われますよね。口やかましくいうことを「けんけん言う」とか。「ほろろ」については、激しく羽をはばたかせる「保呂打ち」からきているという説もありますね。僕は野生の雉を一度しか見たことがありませんが、実際の雉の鳴き声はこちら。

カーカン…?

擬音語ってそういうもんですよね…。犬の鳴き声だって「わんわん」とか「ばうわう」とか。鶏に至っては「コケコッコー」と「クックドゥードゥルドゥー」ですよ?言葉にできない音を無理やり言語化しているわけですから、多少の無茶は多めにみましょう。


3、②

序詞を見つけるヒントに「掛詞」があることを覚えていると、こちらは手早く処理ができたのではないでしょうか。

「心は空にみち」とありますから、「満ち」は想像がつくでしょうし、「陸奥」という地名がかかっていることにも気付けると思います。

けれども、訳すとなるとかなりハードルが高い和歌なので、意訳を入れながら下で訳しておきますね。

あなたを思う気持ちが我慢しきれずに、恋心は空に満ちております。その「みち」ではないけれども、陸奥にあるという千賀の塩竈が「ちか」いとは言いながら都とは離れているように、私とあなたの心も離れてしまっていて、近くにいる甲斐がないことですよ。