2021年度広島大学附属中学校:入学検査問題(国語)大問2解説〈前編〉

広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。

今回から、令和3年度(2021年度)広大附属中入学検査問題の大問2の解説に入っていきます。

その前に1つだけ注意点です。

物語冒頭に記されているリード文には読解のために必要な前提条件がまとまっているので、必ず丁寧に読んでおいてください。

丁寧に読むとは、主人公の設定や置かれている状況など、心情変化にかかわりそうな設定にマーキングをして、目立つ状態にしておくことを指します。

一読しただけで設定を完璧に覚えられる人は少ないですから、読み直しがしやすい形にデザインしておくことが重要です。

出典伊吹有喜『雲を紡ぐ』
小問数8問
文字数4000字程度

問1:適語補充

適語補充問題は、空所の前後に注目し、入るべき意味を想定したうえで選択肢を見ていくのが鉄則です。

最初に選択肢を見てしまうと、選択肢の言葉の意味に引っ張られてしまい、肝心の「空所に入る言葉かどうかを判断する」という意識が薄れてしまいます。

必ず、想定解を作ったうえで選択肢にあたるという順番を守りましょう。


さて、Aから順番に前後関係を確認していきましょうか。

【顔も覚えていない祖母が( A )にして作ってくれたのが、このショールだ。】とあります。

リード文にもある通り、主人公の美緒は、祖母が作ってくれた赤いショールを大切にしているんですよね。

父のいとこである裕子が仕事をしている姿を見ながら、美緒は「祖母を思った」と言っています。

「布に触れた指先から、ほのかなぬくもりが伝わってくる。」「好きだ」という描写からもわかる通り、美緒は赤いショールから祖母の愛情を感じ取っているわけですね。

ということは、空所に入る内容は、「祖母が愛情をこめている」ということが分かる言葉が入るはずですよね。

ア:慈しむように が最も適当でしょう。


次はBの前後の分析です。

火事に気が動転している美緒を制し、祖父が炎に向かっていくという緊張感あふれるシーンです。

【( B )に立ち上がり、消火器を取りに美緒は廊下へ飛び出す】とあります。

「飛び出す」という動作からも、美緒が大変焦っている状態が伝わってきますね。

オ:弾かれたように が最も適当でしょう。


最後にCの分析です。

美緒が祖父に染めを教えてほしいと頼むシーンです。

【わかった、と( C )な声で祖父が答えた】とあります。

祖父はどんな思いで美緒の願いを聞き入れたのでしょうか。

「お前のお祖母さんも昔、まったく同じことを言って、私のもとから去っていった」

「やってみなさい。ただし、おまえは決して絶望するな」

美緒の姿をかつての妻と重ね合わせ複雑な思いになりながらも、見事な決意表明を見せた美緒の願いを聞き入れざるをえない祖父。

万感の思いがあることでしょうが、「絶望しない」という条件つきで、染めを教えることを承諾します。

なんとか口に出した承諾の気持ち、それを表すのに最も適当なのは イ:絞り出すように ですね。

問2:なぜですか問題(表現効果)

傍線部①「月明かりのなかで~心に浮かんだ」とありますが、「水仙月の四日」がここに引用されている理由の説明として最も適当なものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。

エ:美緒に赤い毛布に守られた子どもを思い出させ、色と布の力に思いを至らせる。


引用の意図を問う、表現効果の問題でした。

文章に用いられている全ての表現は、筆者によって「選択」されています。

ということは、主人公が小学五年生と書かれていれば、主人公が小学5年生でなくてはならない理由がある、ということになります。

今回引用されている「水仙月の四日」についても、「水仙月の四日」でなければならない理由があるのですね。

では、この物語と「水仙月の四日」の間にはどういう共通点があるのか、ということから考えていきましょう。

【赤い毛布をかぶり、吹雪のなかで遭難した子ども。その子の命を取れと命じられた雪童子は、わざとひどく突き倒し、赤い毛布でその子をくるむと、自分の雪で隠して守ってやる。】

明らかに、「赤い毛布」と「赤いショール」が対応しています。

「水仙月の四日」における「赤い毛布」は、遭難している子どもを守るために雪童子が使ったもの。

「水仙月の四日」の光景が頭に浮かべた後、美緒は自分を鏡で見て、自身がなさそうな自分を守るようにして鮮烈な色を放っているショールを意識します。

「守られるのではなく、背中を押されているみたいだ。これが色の力。いや、色と布の力だ。」

「今ならわかる。ずっと身近にあったこの布が、どれほど高い技術で作られていたか。赤がいい。強くそう思った。赤だ。」

羊毛を扱う仕事が好きだと感じながら、職人になる覚悟が持てないでいた美緒。

彼女は「水仙月の四日」のような光景を見て、「赤い毛布」から「赤いショール」を連想し、自分の背中を押すように鮮烈な輝きを放っているショールの持つ「色と布の力」を感じ取ったのですね。

以上のことから、解答はエになります。


選択肢の検討をしておきましょう。

ア・イ・ウ→「水仙月の四日」と物語との関連性を示せていないので、全て×。「赤い毛布」と「赤いショール」の対応関係に触れられていない時点で、解答候補になりません。

問3:語彙

語の意味を問う問題には、「本文中における意味として最も適当なものを」と問題文にある場合が多いです。

ここで勘違いしないでいただきたいのは、自分の本文解釈を反映した選択肢を選ぶのではなく、あくまで「辞書でひいたときの意味」を選ぶ必要があるということです。

比喩や象徴表現を問われた場合は例外で、文脈を反映させる必要がありますが、原則「辞書義で解く」ということは意識しておきましょう。

要するに、知らなければ解けない、知っていれば解ける。

言葉を増やしておきましょうね、ということです。

(a)けたたましい → ア:急に高い音が響きわたって騒がしい様子。

(b)怪訝そうな → ウ:不思議で合点がゆかないような様子。


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