2021年度広島大学附属中学校:入学検査問題(国語)大問1解説〈前編〉

広島国語屋本舗現古館 館長の小林です。

広島/国語の検索結果で1番初めに出てくる塾として、地元の方に役立つ情報をお渡ししないのはまずかろう!という判断から、広大附属中の入学検査問題の解説をしていくことにします。

今回は、令和3年度(2021年度)広大附属中入学検査問題の大問1の解説です。

保護者様向けに書きますから、私の解説を読んだうえで、易しい言葉に置き換えてお子様にお伝えいただければと思います。

出典阿部正彦『小説的思考のススメ「気になる部分」だらけの日本文学』
小問数8問
文字数2,500字程度

問1:漢字の書き

(a)意外

(b)前提

(c)関門


漢字の知識を問う問題の難度はそれほど高くありません。

ただ、(a)イガイ のように、同音の別の漢字が想定される出題には注意しましょう。

言葉は一文の中で機能しているわけですから、前後文脈の検討もなしに「以外」などと書いてしまってはいけません。

たかが知識問題、と侮って落としてしまう1点の間に何人の受験生がいるかを想像するべきです。

広大附属中の入学検査には、高い学力を有した受験生が集まるわけですから、より一層油断は禁物です。

漢字問題は一文に戻して解こう!

問2:適語補充

A→ア

B→オ

C→エ

D→イ


広大附属中入学検査問題の適語補充は、接続詞や呼応の副詞を問う出題が多いです。

適語補充問題では、あらかじめ空所前後の文脈をおさえて、空所に入る語の役割を判断しておきましょう。


【Aの解説】

Aの前には「もはや誰もそういう娯楽を求めてはいないのでしょうか。」とあります。

「そういう娯楽」とは、小説を読んでリラックスしたり、感動したり、スリルを味わったりすることを指しており、「小説を読むという楽しみを人々は求めなくなっているのでしょうか?」と問いかけているわけですね。

そして、Aの後には、「読書そのものから人が遠ざかりつつあるのは確かです」とあります。

Aの前で提示した問いかけに、「~は確かだ」と一定の理解を示しているんですね。

ここから、「確かに~だろう。しかし、私は~だと考える」という形を思い出しましょう。

自分の意見とは違う考えに一定の理解を示しつつ、そのあとで自分の意見を提示する形です。

これを【確かにしかし構文(譲歩-主張構文)】といいます。

一度ほかの意見に理解を示しているため、自分の意見に説得力が出るんですね。

さて、この形を思い出したあとで選択肢をみると、〈ア もちろん〉が答えだと導けるはずです。


【Bの解説】

先ほど説明した【確かにしかし構文】がヒントになっています。

想像通り、Bの直前には「でも」という逆接がきていますね。

つまり、「人々が情報を取得するツールが、紙からパソコンやスマホに変化している」=「読書から遠ざかりつつある」という内容に反対意見を述べはじめるわけです。

Bの後には、『「画面」を通して得る情報であっても、本質的な部分はそれほど違わないのではないでしょうか』とあります。

「人々が情報を取得するツールが、紙から画面に変わったことで、読書離れが深刻に見えるよね。だけど、パソコン・スマホも読書も大事なところは変わっていないんだよ。」と言っているわけです。

さて、ここで注目したいのは、「、」「。」の前に特徴的な言葉があるかどうかです。

今回は、「であっても」という仮定を導く語を見つけてほしいわけですね。

これをおさえておけば、〈オ たとえ〉の発見は簡単なはずです。


【Cの解説】

Cは比較的わかりやすいヒントがあったと思います。

Cの前後は、「私などは C 自分のことを言われているような気になります」となっています。

中学受験の入試問題では、比喩(たとえ)の問題は頻出ですから、特に直喩(まるで~ような、~みたいに、~のごとく など、一目見てそれとわかるたとえの形)はマーキングをしておくとよいでしょう。

Cも例にもれず、「~ような」に注目すれば〈エ まるで〉が導けますね。


【Dの解説】

A~Cをばしっと合わせられた人にとって、残りの選択肢からDの答えを見つけるのは易しかったかもしれませんね。

けれども、本文の内容が分かっていなければ解けないという意味でいくと、このDが最も難しい問題だったと思います。

では、Dの前から整理していきましょう。

「そういう所作に対してこのような批判が起きるのは、」とあります。

「そういう所作」とは、「虚構を語るという人間的な所作」のこと、「このような批判」とは、「仮想現実に没頭すると現実世界と対応できないという批判」を指しています。

つまり、「虚構(フィクション)を語ることを人間は昔からずっとやってきていて、すごく人間的な行為だよね。なのに、ネットという虚構は批判するの、おかしくない?」と言っているのですね。

次に、Dの後を見てみましょう。

「人が虚構との付き合い方を忘れてしまったことの証でしょう」とあります。

Dの前後を簡単にまとめると、「虚構を語るのが悪いんじゃない、虚構との向き合い方がへたくそになったんだよ」ということになります。

Dの前に書いてある内容よりも、Dの後ろに書いてある内容の方がよい(正しい)という構造になっていますよね。

その役割を考えると、〈イ むしろ〉に答えが絞れます。

適語補充は、前後の文脈から空所の役割を考えよう!

問3:どういうこと問題

「本質的な部分」とは、どういうことを言っているのですか。十字以内で答えなさい。

無難な解答:文字を読むこと。〈小林の解答:文字を読む必要性。


問2の解説でも少しお話したので、内容の解説は飛ばすことにして、さっそく解き方の確認をしていきましょう。

まずは、傍線部を一文に戻して内容をとらえます。

ここでは、「違わない」という言葉に注目していきます。

「違わない」とは、似ているということですから、ここで「似ている」の説明公式をご紹介しておきます。

AとBはCという点で似ている。

「似ている」を説明する際には、異なる2つ以上のものの共通点を探せばよいわけですね。

この一文でいう「A」と「B」は、以下のものです。

A:「画面」を通して得る情報

B:読書を通して得る情報

では、この2つに共通している内容は?

傍線①を含む一文の直後に書いてありますね。

「やはりそこには文字がある。読むことが必要である。」

つまり、「パソコンやスマホで情報を得るときにも、読書を通して情報を得るときにも、どっちも文字を読む必要があるから、その点では大切なところは変わらないんじゃなくって?」と筆者は言っているわけです。

これが上の公式のCにあたる部分です。

さて、問3は「どういうこと」問題ですから、傍線部の内容を、意味が伝わるように言い換えてあげる問題です。

AとBに共通するCという「本質的な部分」を、10字以内で言い換えればよいわけですね。

無難な解答は、「文字を読むこと。」になるでしょう。

国語の解答をつくる際の暗黙の了解、「どういうこと?」と聞かれたら「~こと。」で文を終える、というルールを守った解答です。

しかし、「読書もパソコン・スマホも、どっちも文字を読まなきゃいけない点では一緒!」という内容なのですから、「必要」という言葉は入れたいところです。

すると、「文字を読む必要性。」という解答になるかと思います。

問いに対する解答になっていればよいのですから、まともな教育機関であれば、これで減点になることはありえない、という信頼が私にはあります。

ただ、こればかりは採点者に依拠する部分が大きいですから、無難な方の解答を採用して問題ないかと思います。

どういうこと問題の鉄則!本文の内容と問いの内容をしっかりおさえて、言い換えよう!

問4:なぜですか問題(抜き出し)

「『文学』という言葉に伴う独特の臭気のようなものーそのくさみーを私も強く感じるのです。」とありますが、なぜ、そう感じるのですか。その原因が説明された一文を本文中から抜き出し、最初の五字を答えなさい。

私たちの心〈6段落1行目〉


「なぜですか」問題の答えは、自分の解答と問題文をくっつけることで確認ができます。

たとえば、「外で遊ばなかったのはなぜですか?」という問いがあったとしましょう。

そして、自分で作った解答が「雨が降ったから」だったとき、自分の答えと問題文をくっつけてみましょう。

「雨が降ったから、学校に行かなかった。」

意味が通りますよね?

この作業をすることで、答えの正しさが確認できるわけです。

さて、「なぜですか」問題というものは、どういうルートを使って目的地にたどりついたのかを問うているようなものです。

肝心の目的地がずれていたら、いつまでたっても解答は出来上がりませんから、まずは傍線を含む一文の意味から理解していきましょう。

傍線部では、「文学という言葉にマイナスなイメージを、(本を書くような)作者でも、一般の人と同じように感じてしまう」ということを言っています。

「独特の臭気」や「くさみ」といった言い回しで意味がとれなくなった人もいるかもしれませんが、難しく考えすぎることはありません。

少なくとも筆者が、プラスなイメージを持っているのか、マイナスなイメージを持っているのかは判断できるはずですよね。

言葉の難しさで迷ったら、まずはプラスマイナスの判断をしてください。

言葉をたくさん知っておくことは重要ですが、試験本番で辞書を引くわけにはいきませんからね。

では、なぜ「文学」という言葉にマイナスのイメージを持ってしまうのでしょうか。

傍線②の直後に、「なぜでしょう。いったいなぜ、私は小説が読めないのか」というわかりやすい問題提起がありますから、その後ろに注目しましょう。

すると、「小説とは本来、読めないものなのです」という衝撃的な発言が飛び出します。

では、なぜ小説は「読めないもの」なのか。

「何しろ、それは虚構である。」、作り物であるからだ、と言っているんですね。

さらに、考えましょう。

なぜ、虚構である、作り物である「文学」にマイナスなイメージを持ってしまうのでしょうか。

「私たちの心や身体には元々、異物や偽物や不要な物を排除するメカニズムが備わってい」るからですね。

作り物である「文学」は偽物であり、いらないものであり、そういうものを心や身体から排除しようとする働きを人間は持っているんだ!と言っているんですよ。

最初に言ったように、解答と問題文をくっつけてみましょう。

【人間はいらないものを心や身体から排除しようとするメカニズムを持っているから、文学という作り物にマイナスなイメージを感じる。】

意味が通りますね。

よって、〈私たちの心〉が解答になります。

「なぜですか」問題は、答えと問題を合体させて確認しよう!

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