本当に、読めてますか?

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

繰り返し、繰り返し、本当に繰り返し申し上げているのですが、国語という科目は「日本語だから何とかなる科目」では全くありません。

もし仮にそれが真ならば、「国語」は入試科目から外れるはずですよね。

試験になる科目である以上、そこには必ず平均点があります。

平均点を5~6割に調整するノウハウが作題者側にはあり、それに伴って、学生たちが4割~5割の得点をしっかり落としていくということです。

どこが「何とか」なっているんでしょうか。

今回は、よくこのブログでも紹介する「AI VS. 教科書の読めない子どもたち」という著作を引用しながら、いかに子どもたちが「読めて」いないのかをお伝えしていこうと思います。

「読める」だけで上位〇パーセント

まず、下の問題を解いてみてください。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexandraの愛称は(   )である。

①Alex ②Alexander ③男性 ④女性

AI VS. 教科書の読めない子どもたち p200より

これが問題と言える代物かどうかはさておき、衝撃的な結果が示されています。

この問題の正答率は、中学生が38%(235名に調査)、高校生でも65%(432名に調査)だったというのです。

調査母数は限定的ですが、進学校に通う高校生であっても3分の2の生徒は満足に文が読めていないということが分かったのですね。

学力と読解力は必ずしも比例せず、読めない子は一文すら読めていないという恐ろしい現実。

しかし、この結果は、妙に私の実感と重なりました。

というのも、まともな日本語になっていない記述解答を相当数添削してきた経験があるからです。

まともに一文が書けない、読めない。

一文すら扱えないのですから、「文章」に太刀打ちできるはずがありません。

ちなみに、正答は①のAlexです。

一番多かった誤答は、④の女性だったといいます。

「Alexandra」という単語だけを見て、女性を連想したのでしょう。

主語をつかめていないということの証左ですね。

この悲しい実験結果から言えることは、何も悲観的なものだけではありません。

まともに一文が読めるだけで、上位38%~65%には入れるという、お得な情報も伝えてくれているのです。

係り受けすら知りません

これまた悲しい現実をお伝えするのですが、ほとんどの学生は「係り受け」すら知りません。

主語、目的語、述語がとっちらかった文を平気で書いてしまいますし、本文にある言葉をサイボーグのようにつないではばかりません。

2重の意味をもつ文章を書いてしまっても、それを修正することもなく、そもそもそれに気づいていません。

たとえば、次のような文を見てみましょう。

タクシーが待っている間に到着した。

ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集 p49より

この1文は、2つの意味でとることができます。

①待っていたのは「タクシー」であり、誰が到着したかは明示されていない

②到着したのは「タクシー」であり、誰が待っていたかは明示されていない

では、この一文を書いた人は、①と②のどちらの意味を伝えようとしているのでしょうか?

もし、①ならば、このままでも伝わらないことはないでしょう。

けれども、②ならば、係り受けの問題が浮上します。

係り受けの基本的なルールとして、係る言葉と受ける言葉は近づけるというものがあります。

ですから、 待っている間にタクシーが到着した。 と書く必要があります。

このようなルールを、ほとんどの学生は知りません。

なぜなら、教わっていないからです。

よほどの読書経験がある子であれば、経験則として「文章がうまい人はこう書く」というノウハウがたまっていて、自分もそれに倣うことができる、ということもあるでしょう。

しかしながら、ほとんどの場合は、そうではありません。

まず一文が扱えるようになるための訓練が必要なのです。

読解力判定小テスト

そこで、「そもそも一文をまともに扱えているかどうか」を判定するための小テストを作成します。

このブログのトップページにリンクを貼りますから、ぜひチャレンジしてみてください。

課題発見のためには、現状分析と目標設定が不可欠です。

今いる自分の位置と、将来自分がいたい位置を決定して、そこでようやく課題が見つかるのです。

課題とは現状と目標との距離に他なりませんからね。

近日中に公開予定です。