読書で「読む力」が伸びる?

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。
国語が苦手なお子さんをお持ちの方がやってしまいがちな指導に、「自力で読書をさせる」というものがあります。
もちろん、読書は手持ちの情報を増やしてくれますし、文章への耐性をつけてもくれます。
国語に関わる「基礎体力」を養ってくれることは間違いありません。
しかし、それで「読む力」が養われるのだとお考えなのであれば、それは大きな間違いだと言う他ありません。
最後に重要なお知らせもありますので、じっくり読んでいただければ幸いです。
「自由のある読書」と「制約のある読書」
私は、読書について考える際に、「自由のある読書」と「制約のある読書」に二分して話を進めます。
「自由のある読書」とは、何を読むか・どのように読むかが自由な読書のことであり、学校の朝読書や趣味の読書など、私的経験としての読書を指しています。
それに対して、「制約のある読書」とは、何を読むか・どのように読むかについて制約を受ける読書のことであり、指導者の働きかけを受ける読書(リーディング・ワークショップ:RW)を指しており、こちらの場合、読んだ後についても指導があります。
一般的に、「読書をさせる」という指導が行われる場合、「自由のある読書」をさせる場合がほとんどです。
私的な読書経験は、それはそれで大切なことなのですが、
1、知らない世界がテーマの本を選択しないことが多い
2、抽象度・言葉の硬度が高い本を選択しないことが多い
3、現在の自分の知識と大きく乖離した本を選びやすい
4、自分の受けとった印象、自分が持った感想を重視し、客観性を意識した読みが軽視されやすい
など、少なくとも「国語教育」という側面から考えれば、様々な問題が想定されます。
特に4なんて、国語教育が目指す「読む力」の対極に位置するものではないですか?
「読む力」が弱いからそれを鍛えようとしているのに、「自力で読む」ことによってそれが身に付くなんてことがあるでしょうか。
読書における指導者の働きかけ
自力での読書だけでは「読む力」がつかないことはご理解いただけたと思います。
では、読書において指導者ができる働きかけとはどのようなものでしょうか。
私は、大きく分けて6つあると考えています。
1、読書のコツの伝授
読書を日常的にされる方ならご存じだとは思いますが、読書にも沢山のコツがありますよね。
読んでいる内容と他の知識とを関連付けたり、イメージをしたり、イメージがわかない場合は調べてみたり、疑問を持ちながら読んだり、要点はどこかを考えながら読んだり…。
まずはコツが存在することを知りましょう。
2、選書のアドバイス
自分だけで選書をすると、自分の知っている知識の幅だけで本を選んでしまったり、自分の語彙力のレベルと大きくかけ離れた本を選んでしまったりします。
そのため、自分の教養を深めてくれる幅広いジャンルの本を選択肢として提示してくれる指導者、自分の語彙力を高めてくれる難度の本を提案してくれる指導者が必要となります。
学びとして「読書」という方法をとる以上、ある程度選書の制約は必要です。(疑似科学に依った本や歪んだ歴史観に依った本などは避けねばならないでしょう。)
3、要約のチェック
読み取った内容が適切であるかどうかは、適切に読むことができる指導者のチェックを受けなければ判断ができません。
そして、読み取った内容がずれている場合は、どこが読み取れていないのかを明確にし、それを修正しなければ、「読む力」はいつまでたってもつきません。
ですから、読んだ本の要点をまとめ、そのチェックを受ける必要があります。
また、要点をまとめられるということは、文章を読む際に「強弱」を意識して読めているということでもあります。
筆者の主張や、登場人物の心情変化と原因に着目するという、国語における文章読解で大切な力を鍛えることができ、具体的事例を抽象化して言い換える力も身に付きます。
4、主張のチェック
文章を適切に読み取り、それをまとめることができるようになったら、次はそれに対して主張を展開していきましょう。
自分がどう感じたのか、何を考えたのか、賛成・反対…。
そこまで思考を働かせ、「読みっぱなし」にしないことが重要です。(「読みっぱなし」の「読み」までいけない人が大半ではあるのですが)
そして、その主張は相手に伝わらなくてはいけません。
人に伝わる表現になっているのか、論理構造は正しいのかなど、こちらも指導者のチェックが必要です。
5、発表のアドバイス
要約ができ、主張もまとめられるようになったら、それを実際にプレゼンテーションしてみましょう。
一緒に本を読んでいる仲間や指導者に発表をしたり、おうちに持ち帰って家族の方に発表をしたりします。
学んだものは誰かに伝えなくては身についていきません。
社会でも必要とされる「伝える力」の成長を促します。
各ご家庭でも、読んだ本の内容を聴く時間を持ってあげていただきたいと思います。
6、人と本をつなぐ「場」の創出
せっかく本を読むのですから、それを他の人にも紹介してみましょう。
各自の観点でまとめた発表内容をカードに記録し、掲示したり、このブログに保存していったり、塾の書籍に貼り付けたりしてもいいですね。
そうした他の人の観点を見ていくと、自分のものの見方と他の人のものの見方を比べる機会にもなります。
読書を通して人と人が、人と本がつながる「場」が生まれます。

何のために読書をするの?
では、ここまで書いてきたような、指導者による「制約のある読書」は、何のためにするのでしょうか?
狭義に言えば、国語の成績を上げる土台を作るため。
広義に言えば、自分で考えるための土台を作るためです。
まず、「国語の成績を上げる土台を作る」という目的についてです。
国語を10年間指導してきて気づいたのは、国語ができない子の抱える問題は「テクニックを知らない」と「知識がない」の二種類だということです。
そして、ほとんどの場合が「知識がない」ことが原因なのですね。
いくらテクニックを伝えたところで、肝心の土台が欠けているばかりに足踏みを続ける生徒を何人も見てきました。
国語なんてもってのほか、算数ですらもびっくりすることはたくさんありました。
たかし君のこぐ自転車のスピードが時速270kmだったり。
160円の品物を5個買い、1000円を出したおつりが4200円だったり。
これらの問題は、計算間違いや「読む力」の有無以前に、単純に生活に根差した知識がないのです。
もちろん、こうした直接的な経験は、自ら積んでいく他ありません。
けれども、そうではない疑似体験なら読書を通して可能なのですね。
そもそも、知っていることを増やしましょう、ということです。
次に、「自分で考える土台を作る」という目的についてです。
「制約のある読書」では、様々な力を身につけることができます。
指導者のアドバイスを受けて選書をするということは、自分の興味のある分野を選べるようになるということです。
要約をするということは、誰かの主張を精確に捉えられるようになるということです。
主張を整理し発表をするということは、誰かと意思の疎通ができるようになるということです。
これらの過程で、分からないことが出てきたら、自ら情報をとりにいくようにもなるでしょう。
上に書いたすべてが、「自分で考えるための土台」ですよね。
コロナ禍にあり、情報は錯綜し、時代は加速度的に変化しています。
自分で情報をとり、自分で考え、自分で判断する、そんな個の力が求められています。
「制約のある読書」は、そんな「生きる力」とも言うべき力の土台を作ってくれるのです。

教養読書コース、はじめました
というわけで、広島国語屋本舗 現古館では、「教養読書コース」を新しく開講します。
概要は以下の通りです。
【現古館 教養読書コース】
対象 | 小学3年生~小学6年生 *解の原則体験講座の受講は必須 |
曜日 | 日曜日 |
時間 | 9:00~22:00の間 週1回 90分~180分程度 |
料金 | 16,500円(内部生は11,000円) |
「解の原則体験講座」の受講が必須って、入塾の勧誘をされたりするんですか?
いいえ。三者面談を通して、保護者の方と共通認識を作っておきたいのです。しかし、面談のためだけにご足労いただくのが申し訳ないので、お土産として体験授業をプレゼントしています。また、私の「腕」がどの程度のものかお伝えしないまま、大切なお子さんをお預けいただくことも失礼だと思います。
受講時間が「90分~180分」程度って、テキトーですね?
はい。それぞれのお子さんの状況によって、集中力の続く時間が違いますから。適宜休憩をはさみながら実践するので、時間に幅が出るのは当然ともいえます。気分が乗ってきたときには、一気に読み進めたくなるということもありますし。
お迎えの時間はどうすればよいでしょう?
お子さんと連絡をとっていただくか、あらかじめ終了時間を決めておいていただくとよろしいかと思います。また、お子さんと相談の上、終了時間の目安を塾長のスマホからご連絡することも可能です。弊塾内に、5~10分程度でしたらお待ちいただけるスペースもございます。
お休みした際の振替はありますか?
はい。最低でも、90分×4回(5回)を想定しています。ですから、別の日曜日の受講時間に追加していただければと思います。一日に複数回来ていただいてもいいですし、柔軟に対応できます。
読む本は塾にあるものだけですか?
いいえ。あらかじめご相談いただければ、ご持参いただいた本でも結構です。私の作成した〈選書リスト〉から選んでいただくこともできます。興味・関心の幅を広げる、深めることを前提にした選書をしていきましょう。
教室内は、読書をしている子ばかりですか?
いいえ。国語の演習を行っている生徒もいます。部屋は分けますが、私の目が届く範囲です。指導している際の声も聞こえます。しかし、私の経験上、集中している子に影響があったことは一度もありません。マナーの指導をする必要のある生徒さんが来られたことも、一度もありません。静かな環境であることは大前提ですね。
指導者は館長だけですか?
はい。全ての指導は館長が行います。館長が対応できる人数しか受け入れる気がありません。教育の場では、指導の質が全てでしょう。
読書にお金を払うのって、もったいなくありませんか?
ここまで読んでいただいている時点で、この講座の価値をご理解いただいていると考えております。逆に、ご理解いただけていない場合、検討していただく必要はございません。弊塾とはご縁が無いと思います。