「復文」による国語学習
広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。
先日、大学入試研究の勉強会に出席した折、以前から御縁をいただいている英語専門塾の塾長先生と再会しました。
先生のご厚意で授業見学をさせていただき、大変刺激を受けましたのでご報告です。
徹底した音読
その英語専門塾さんは、「音読練習こそが英語学習の中心」と掲げ、徹底的な音読指導をなさっています。
私が何より衝撃だったのは、「音読」という学習法が、精密なメソッドとして練り上げられている点でした。
私もかねてより音読指導には力を入れてきましたが、どのように読むべきか、どれくらい読むべきかなど、具体的な仕方にまで踏み込んだ指導はできていなかったように思います。
けれども、その英語専門塾さんでは、全てが「具体的」で指示が明確。
小手先ではない「本物」の学力をつけるために洗練された場がそこにはありました。
「本物」を見分ける唯一の方法は「具体性の有無」だなぁ、と改めて感じた次第です。
早速持ち帰り、国語学習用にアレンジを加えて使わせていただいています。
「復文」による国語学習法
さて、授業見学の際に学んだ内容は現古館内のみで還元するとして、私の指導方針と重なった部分をお伝えしようと思います。
私が見学させていただいた英語専門塾さんでは、塾長先生が生徒さんの音読を全てチェックしておられるのですが、必ず「和文→英文」「英文→和文」の2パターンをクリアさせておられました。
これは、かつて漢文学習に用いられていた「復文」という学習法です。
これを古典に置き換えて考えてみましょう。
たとえば、
蝶めづる姫君の住み給ふかたはらに、按察使の大納言の御むすめ、心にくくなべてならぬさまに、
という古文があります。(堤中納言物語/虫めづる姫君)
これを、まずは品詞分解し、現代語訳をしてみましょう。
蝶/めづる/姫君/の/住み/給ふ/かたはら/に、/按察使/の/大納言/の/御むすめ、/心にくく/なべて/なら/ぬ/さま/に、
蝶を かわいがる 姫君が住んでいらっしゃる(家の)そばに、按察使の大納言のお嬢さん(が住んでおられたが)、奥ゆかしく 並一通りではない様子で、
次に、現代語訳から古文に直してみてください。
赤で示した助詞・助動詞、青で示した意訳部分、オレンジで示した重要語部分。
スムーズに戻せましたでしょうか。
この一文にも満たない部分だけで、重要な古文単語・文法がつまりにつまっているのです。
受験における古典学習では、古典を現代語訳することはあっても、現代語訳を古典訳することはありません。
けれども、一見遠回りにも思えるこの往復で身に付くパワーは、とんでもないものになりますよ。
古文では助詞が省略されがちなことも、古文でどういう語の省略から意訳が必要になるのかということも、重要語・文法も。
全ての確認に使えるのですね。
もちろん、これはかなり高度な学習ですから、基本的な知識は頭に入れておく必要はあるでしょうが、音読と掛け合わせた復文指導の発揮する威力は想像に難くありません。
最近では、駿台予備学校の田中健一先生が復文を推奨され、世間一般でも評価が高まってきている学習法です。
やはり、「本物」の指導は具体的なのですね。
では、国語屋本舗 現古館はどうでしょうか?
「解の原則体験講座」で、ご判断いただければ幸いです。