令和3年度広島県公立高校入試選抜Ⅱ・国語:大問1の解説

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

広島県公立高校入試選抜Ⅱを受験された皆さんはお疲れさまでした。

本日行われた3科目の手ごたえはいかがだったでしょうか?

しっかりと気持ちを切り替えて、残りの2科目でも努力の成果を提出してきてくださいね。

さて、令和3年度広島県公立高校入試選抜Ⅱの国語の問題の難易度ですが、昨年度と比較して、難化したということができるでしょう。

けれども、漢字の読み書きの問題が6問→5問に減少したことや、大問4の小作文での記述字数が200字→250字に戻ったことなど、些末な変化は置いておくと、作題方針に大きな変化は見られませんでした。

これから、令和3年度広島県公立高校入試選抜Ⅱの解説を行っていきますが、もしも明日に入試を控えている方がこの記事をご覧になっている場合は、そっと端末の電源を落として寝室に向かってくださいね。

大問1の概観

戸川幸夫「瓜王」(1955年発表)が出題されました。

椋鳩十と並び立つ、動物文学の大家です。

明治期以降の文豪の作品が出題されてきたこれまでの5年間と比べ、昔の作品だとはいうものの、比較的読みやすく感じた人が多かったのではないでしょうか。

問4で言葉の意味を問う選択問題が出題されたことを除けば、漫画の一コマや生徒の会話文を含めた複数資料化も例年の傾向通りです。

根拠を取りづらい「悪問」ともいうべき問いもありましたが、それは各問題の解説に回すとしましょう。

問1:漢字の読み(1点×3)

ア:抵抗(ていこう)

イ:研いだ(と)

ウ:反射(はんしゃ)

例年並の難易度でした。

問2:適語補充問題(2点)

空欄に適する語を入れる問題です。

過去5年の過去問の内、適語補充問題の出題は平成29年度広島県公立高校入試の一度だけです。

適語補充問題は、空欄の前後にヒントがありますから、前後の内容をとらえていきます。

しかし、鷹匠にはおそれが残った。吹雪の闘魂が、負傷と同時に傷つけられてしまったのではなかろうかという心配だった。

□の傷は治しえても、気性の傷は治すことが困難である。

戸川幸夫「瓜王」による

赤字と青字が対応関係にあります。

身体の傷は治せても、心の傷は治せない、ということを言っているわけですから、適語は

「肉体・身体」

などが挙げられるでしょう。

空所前後の対応関係を見抜く力を問う、綺麗な出題だったと思います。

問3:心情の理由説明問題(3点)

どうか元気でいてくれるようにといのりながら……。とあるが、鷹匠が、このようにいのっているのはなぜですか。四十字以内で書きなさい。

心情の理由説明問題は、傍線内に含まれる行動から心情を、心情から原因を探っていきます。

「元気でいてくれるようにといのりながら」は、鷹匠の行動を示す表現ですから、ここに含まれている心情を読み取りましょう。

吹雪を一度は負かした宿敵である赤ぎつねとの戦いを前にして、鷹匠はおいっこに赤ぎつねの消息を探らせます。

そして、心の中で、その宿敵が健在であることを願っているわけです。

ですから、〈どうか元気でいてくれるようにといのりながら〉という言葉を言い換えた

赤ぎつねが健在であることを願っている

という要素は必ず入れなくてはいけません。

けれども、何のために宿敵の健在を願うのでしょうか。

それが、赤ぎつねに対する心情であるはずがない、ということはご理解いただけるでしょうか?

大切にしている吹雪への心情であるはずなんですね。

本文中には、鷹匠の葛藤が繰り返し書かれた部分があります。

〈鷹匠としての、また優れた鷹としての誇りからいえば大問題だった。〉

〈死か名誉かであった。〉

〈鷹匠は、吹雪がきつねをおそれることをおそれた。〉とありますから、もちろん、鷹匠自身のプライドの問題もあったでしょう。

しかし、傍線部では、「吹雪に対する気持ち」が書かれているわけですから、

吹雪の誇りを尊重している

という要素に触れれば問題ありません。

以上の要素を40字以内でまとめると、以下のような解答になります。

吹雪の誇りを取り戻すために不可欠な、 / 宿敵である赤ぎつねの健在を願っているため。(39字)

鷹匠の吹雪に対する心情を表せているか、傍線部が直接示している「赤ぎつねの健在を願う気持ち」をゴールにして書かれているか、がポイントです。

同じようなの意味内容を別の表現に言い換えてあっても当然正解ですし、どちらかの要素に触れることができていれば部分正答となるはずです。

問4:言葉の意味(2点)

単純に言葉の意味を問う問題は、過去5年間の過去問で出題はありません。

知識一発で解ける問題ですが、「赤ぎつねがますます老獪になって昼間も現れ始めた」という文脈を踏まえると、言葉を知らなかったとしても正答を選ぶことはできたと思います。

正答は

イ・対処や処理に苦労している様子

です。

問5:生徒の会話文への空所補充問題(Ⅰ→3点 Ⅱ→2点)

お約束となってきた出題形式です。

今回は、本文の物語の結末にあたる漫画の一コマが資料として提示され、鷹匠のセリフを検討する生徒の会話文が与えられ、空欄Ⅰ・Ⅱともに、記述字数の指定はありませんでした。

ちなみに、漫画には「赤ぎつねを倒して誇らしげな吹雪」と「おめえってヤツはおめえってヤツは…」と顔をほころばせている鷹匠の姿が描かれています。

ともあれ、空所補充問題は、前後にヒントがありますから、特にそちらに注意して読んでいきましょう。

(前略)これまでの吹雪との関係から生まれた鷹匠の気持ちが、このせりふに表現されているんじゃないかな。僕は、( Ⅰ )にも関わらず、赤ぎつねを倒して、鷹匠を誇らしげに待っていたところから、鷹匠の吹雪に対する称賛と、( Ⅱ )気持ちから生み出されたせりふだと考えたよ。

まずは空欄Ⅰについてです。

赤字で示した部分がヒントですね。

「~にも関わらず」という表現は、その前後に逆の要素が入ってくる表現です。

つまり、「赤ぎつねを倒」すという+の表現と逆の表現で、なおかつ赤ぎつねとの決戦よりも前の吹雪についての情報が空欄Ⅰに入ることになります。

採点基準では、

三年前に赤ぎつねと戦ったとき、深い傷を負い弱り切った経験がある。

となっていますが、「一度は負けた」程度の表現であっても、減点される必要はないと思います。

解答欄そのものは30字程度は書けるサイズでしたから、それに合わせろと言われれば頷くこともできますが、「3点」を与えるにたる最重要な要素は「吹雪が一度敗北している」ということだけですから、各高校の採点者のお考えによるでしょう。

ただ、字数が短いことが気にいらないのであれば、問題文で誘導するべきだと私は考えます。


空欄Ⅱについてですが、正直悪問です。

漫画の一コマが資料として与えられているため、「それもしっかりと読み取りましょう」と言いたくなる気持ちは分かるのですが、誘導がへたすぎます。

赤ぎつねを倒して誇らしげに待つ吹雪を見つめる鷹匠の表情は、確かに緩んでいます。

「おめえってヤツはおめえってヤツは」と、反復法を用いながら語っているそのせりふも、彼の深い感慨を示していることは想像に難くありません。

けれども、「表情が緩んでいる」という漫画の一コマだけで、それがどういった+の感情なのかを確定できますか?

採点基準には、

心からいとしいと思う

とあり、「内容を正しく捉えていれば、表現は異なっていてもよい。」ともありますが、私はこの解答が「内容を正しく捉えている」とは思いません。

なぜなら、問いが問いとして成立していないからです。

問いは答えとセットですから、答えの方向が定まらないのであれば、それは問いになっていません。

悪問は「問い」にはなっていますから、先ほどの私の言は最大限に譲歩した怒りの表現です。

この出題、この誘導であれば、+の感情を、本文・資料との矛盾は生まず、「吹雪に対する称賛」と並立する形で書けていれば、その全てを正解にせねばならないと私は考えます。

まとめ

大問1の解説は以上になります。

色々と言いたい放題になってしまいましたが、広島県公立高校入試の作題方針を、私はとても好意的に捉えています。

だからこそ、今回の大問1の作題の粗さには失望してしまった部分があります。

私がここで好き放題言っているだけでは何の意味もありませんから、作題意図については、しっかりと問い合わせをしようと思います。

その返答を踏まえて、追記・修正をするかもしれません。

ですから、自己採点等をされる場合は、私が書いてきたことも頭の片隅に留めて、各高校の採点者の良識を信頼しつつ、気楽にやってもらえるといいかな、と思います。

ちなみに、他の大問は全く文句のつけようがなく、むしろ優れた出題であったと考えています。

次は、令和3年度広島県公立高校入試選抜Ⅱ・国語:大問2の解説でお会いしましょう。

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