高校古典:現代語訳問題でのポイント

広島国語屋本舗・現古館・館長の小林です。

受験生の皆さんは、国公立大学前期試験対策の大詰めを迎えていますね。

そこで今回は、古典における〈現代語訳問題〉のポイントをお伝えしようと思います。

「単語を入れてただ訳せばいいんだろ!」という認識では、意外と取りこぼしが多いのが現代語訳問題です。

確かに、本文の解釈を問われる記述問題は、記述量が多く問題の難易度も高いですから、そちらに気をとられてしまう気持ちも分かります。

しかし、とるべき得点を適切にとれているかが合否の分かれ目ですから、まずは手の回りやすい現代語訳問題の対策を万全にしておいてほしいのです。

見落としているポイント、多いと思いますよ。

それではいってみましょう!

①多義語は文脈に沿って意味を決定しよう

古文でも漢文でも、1つの語が複数の意味をもつ〈多義語〉が存在します。

たとえば、

やさし:①優美だ ②殊勝だ

易:①やさシ〈簡単だ〉 ②かフ〈取り替える〉 ③おさマル〈手入れが行き届く〉

などですね。

このように意味が複数あるわけですが、それら全てを現代語訳に用いることは当然できません。

意味は1つに絞らなくてはいけないのです。

さて、それではどのように意味を選択しましょうか?

知っている意味をなんとなく入れてしまえば、文の意味が通るようになりますかね?

そんなわけはないですよね。

ですから、多義語の現代語訳において私たちが求められるものは2つあると言えます。

①多義語の意味を覚えていること

文脈に沿って、意味を選択できること

この要求は、意外とハードルが高いです。

そもそも多義語のもつ意味を暗記する必要がありますし、本文の内容が理解できていなければ〈文脈に沿って〉意味を選択できるはずもありませんからね。

本文の理解についてはまた別の機会に譲るとして、まずは多義語の意味の暗記についてのアドバイスをしておきます。

今年の受験生がこなしきるには難しい分量かもしれませんが、以下のテキストを利用した多義語の暗記がお勧めです。

東進ブックス【栗原の古文単語教室】は、言葉の意味変化の特徴に焦点を当て、入試頻出の多義語を徹底解説した骨太の一冊。

スタディカンパニー【漢文ゴロゴ】は、入試を精密に分析した結果をもとに、頻出句法と重要漢字の情報をまとめた一冊です。

「知っている」ことが第一関門になる〈多義語の現代語訳問題〉を突破する上で、大きな武器になってくれることでしょう。

②過不足のない訳を心がけよう

特に漢文では、このあたりを曖昧なままにして現代語訳を進めてしまう人が多いです。

おおまかな訳が合っていれば得点はあるだろう、という姿勢では、細かな減点を重ねて取返しがつかなくなってしまうことも考えられます。

たとえば、

①接続〈未然形+ば ⇒ ~ならば / 已然形+ば ⇒ ~と、ので、ところ など〉

②助詞・置字〈して:①手段(~で) ②使役の対象(~に命じて) / 矣・焉:文末について断定を示す など〉

③助動詞〈強意の助動詞「ぬ」+推量系の助動詞 ⇒ 確述用法(副詞を伴って訳す) など〉

などですね。

現代語訳をしていく前に、どのポイントに気をつけて訳していくかを可視化するために、要素ごとに「 / 」を入れておくことをおススメします。

③省略・意味が掴みづらい表現は補足しよう

古典の文章では、主語の省略は日常茶飯事ですし、目的語があいまいであったり、直訳では意味が通りづらい部分が多々あります。

国公立二次試験では、そういった箇所を好んで問うてくるわけです。

ただ、それが試験である以上、解答が1つに定まらなくてはいけませんよね。

ですから、省略があったり、意味が通りづらかったとしても、それらは根拠をもって補足できるようになっているはずでしょう。

さて、その根拠とは前後文脈のことです。

「前と後ろに根拠がある、読めぇ!」というアドバイスは、些か乱暴にも見えますが、それが真理なので仕方がありません…。

けれども、なぜ前後を読めば意味が確定でき、補足できるのかという理屈はお伝えしようと思います。


私たちは、古典の専門家ではありません。

ましてや、学生の皆さんは20年も生きていない方がほとんどですよね。

そんな人たちが、古典で出題された文章を、一面の曇りもなく完璧に訳せるでしょうか?

というより、訳せて良いと思いますか?

専門家の方々に失礼ですよね、それは(笑)

となると、古典において全文訳は求められてはいないということになります。

では、何が求められているのか。

学習内容を用いて読めるはずの場所が、適切に理解できていることです。

読めるはずの場所を読みつなげば、少なくとも問題に答えるためのポイントは捉えることができるようになっているんですね。

読めるはずのところを読みつなぎ、読めないところを類推すること。

これが、入試の古典で求められている力です。

前後文脈をとらえて、その意味を反映させながら、問われた箇所の現代語訳を補足する。

この方針を頭の中に入れておいてくださいね。