広島県公立高校入試詳解:大問4「小作文」
広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。
今回は、令和2年度広島県公立高校入試・大問4について解説していきます。
さっそくですが、平成28年度~令和2年度の大問4をまとめてみましょう。
【年度】 | 【字数】 | 【資料数】 | 【テーマ】 | |
H28年度 | 200字 | 会話文(800字程度) 棒グラフ×2 折れ線グラフ 表 | 新1年生に読書を勧める文章を書く | |
H29年度 | 250字 | 文章(250字程度)×2 円グラフ | 防災の課題・それに対して中学生ができること・防災意識を高める文章を書く | |
H30年度 | 250字 | 投書(250字程度) 文章(125字程度) 漢文+現代語訳(200字程度) 和歌+現代語訳(125字程度) | 古典を学ぶ意義があるという意見で、投書の疑問に答える文章を書く | |
H31年度 | 250字 | 落語のあらすじ(400字程度) 落語のセリフ(300字程度) 会話文(300字程度) | 噺の面白さを伝える朗読の仕方について、意見文を書く | |
R2年度 | 200字 | メモ(300字程度) 作文(500字程度) 会話文(200字程度) | 作文のタイトルについて、意見文を書く |
これら過去5年分の傾向から、
①200字~250程度の、2段落構成の意見文を書く必要がある
②複数与えられる資料が、意見文を書く上でのヒントになる
③誘導に従い、与えられた情報を整理して短文が書ければ、独創的な意見は必要がない
ということが言えると思います。
沢山の文章や図表を見ると、その物量に心をへし折られることもあるかもしれませんが、すべてが得点につながるヒントなんですね。
そう考えると、複数付される資料も素敵な「サービス」に見えてくるはずです。
さて、この手の問題の難点として、自己採点が難しいという問題があります。
書いたはいいけど、それがちゃんと合格点に達する得点なのかよく分からない。
過去問演習をする際にも、何を基準にしてよいのか分からない。
教育委員会が発表している採点基準も曖昧で、イメージが掴みづらい。
そんな不安の声が、毎年聞こえてきます。
しかし、公立高校入試は「試験」ですから、必ず公平かつ明確な採点基準があるはずなのです。
ですから、私がその基準にあたりをつけたものを、1つの基準として提示したいと思います。
☆大問4の採点は、減点方式で行う
減点項目①:漢字・文法などの知識的誤り(誤り1つにつき1点減点、減点上限は2点)
減点項目②:字数が指定字数の8割以上を満たしていない(1点減点)/6割以上(2点減点)/4割以上(3点減点)/2割以上(4点減点)
減点項目③:条件(2段落構成、記述内容など)に沿っていない(2点減点)
減点項目④:論理的一貫性がない(2点減点)
くれぐれも言っておきますが、これはあくまで私の予想した基準です。
この基準の通りに採点が行われていることを保証するものではありません。
大問4の正答率が9.6%、部分正答率が71.0%、誤答率が13.6%、無回答率が5.8%というデータを考慮すると、これくらい緩やかな基準で得点を与えているだろう、という判断ですね。
では、実際に問題を解いていきましょう。
大問4を解く際の方針は、
①問題文の指示を先に読み、書くべき内容を把握する
②①で把握した内容について、それを書く上で役立つ要素を【資料】から抽出する
③【資料】から取り出した要素を根拠に使いながら、条件に沿って文章を作る(あらかじめ簡単な構成をメモにとっておくとなお良い)
という流れです。
これに従って解説を進めていきます。
まずは、書くべき内容を把握しますよ。
小島さんは、中井さんが書いた作文の題名についてのアドバイスを書いて伝えることにしました。あなたなら、どのように書きますか。次の条件1~3に従って、あなたの考えを書きなさい。
「作文の題名についてのアドバイス」を書け、というオーダーです。
つまり、現状の作文の題名は不十分であるという前提がありますから、改善案を示していくことになります。
その場合、「作文の題名の改善案」と「その理由・根拠」を書かねばなりませんから、そのヒントを資料から探していくわけですね。
では、各資料の主張部分をとらえていきましょう。
【メモ】 | エジソンは、「なぜ?」と感じたことを大切にし、生涯学び続けることで大成した。 |
【作文】 | エジソンのように、「なぜ?」と感じたことを追求する姿勢を大切にしたい。 |
【会話文】 | 伝えたいことを明確に伝えるために、自分が一番伝えたいことの中心になる言葉を題名に用いるべき。 |
もう見えましたね。
他の文章問題を解くときと同じように、盤石な誘導があることに気付けたでしょうか。
各資料の主張さえつかめてしまえば、書いていく方向は一つに定まります。
あとは、条件に沿って書いてあげるだけ。
正答のための条件は、 第一段落「疑問を追求する重要性」を示した題名の提案/第二段落「伝えたい内容を明確に伝えるため」という理由の提示/条件1~3を満たす の3点となります。
いかがだったでしょうか。
広島県公立高校入試詳解、令和2年度の過去問解説が終了しました。
どの記事でも申し上げたと思いますが、一見難しく見える文章・複数資料型の設問であっても、適切に問題文の誘導を見抜けば、しっかりと解答を導けるようになっていることが分かっていただけたと思います。
時間制限の難は確かにあるのですが、平成28年度~令和2年度の過去問5年分を用いて対策し、とるべきところをとれる得点力を養っていってください。
2点を拾うために10点を捨てるような時間間隔では、なかなか目標点を取ることが難しいですからね。
健闘を祈ります。