広島県公立高校入試詳解:大問3「古典」

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

今回は、令和2年度広島県公立高校入試・大問3の解説をしていきます。

まずは、平成28年度~令和2年度までの出典と特徴をまとめてみましょう。

去来抄江戸俳諧論書俳句2句の解釈、まとめの文章による誘導で問う
十訓抄鎌倉教訓説話集複数資料の交点を探らせる出題、会話文による誘導で問う
沙石集鎌倉仏教説話集和歌の解釈、掛詞をまとめの文章による誘導で問う
春夜洛城聞笛盛唐漢詩漢詩の解釈、鑑賞文による誘導で問う
御伽草子集鎌倉~江戸(本作「七草草紙」は室町)物語後日談を用いた複数資料型、会話文による誘導で問う

平成31年度に漢詩が出題されていますが、あとは古文の出題です。

和歌の修辞法を問う問題などはいかにも難解に見えますが、こちらも当然ヒントがしっかり与えられています。

適切に誘導に乗っかれば、難なくクリアできる難易度だといえるでしょう。

第1問:指示語+本文理解

大問1・大問2のときと同じく、穴埋め問題は前後に注目してヒントを見つけていきましょう。

…唐土楚国の傍らに、大しうといふ者あり。かれは(   )なり。

穴のすぐ前に「かれ」という代名詞が、すぐ直前の「大しうという者」を指していることはすぐ分かります。

では、彼はいったいどういう人物なのでしょう。

物語はまだ始まったばかりですから、あとを読んでいきます。

すでに、はや百歳に及ぶ父母あり、腰などもかがみ、目などもかすみ、言ふことも聞こえず。さるほどに、老いければ、大しうこの朽ちはてたる御姿を見参らす度に、嘆き悲しむこと限りなし。

両親の老いた姿を見るたび、とっても悲しむ息子。

さぁ、彼は「どういう者」なのでしょう。

選択肢イとエは「子に~」とありますから、お話になりません。

大しうが息子ですからね。

では、大しうは「親に孝ある」のか「親を欺く」のか。

解答は、 ア 親に孝ある者 となります。

第2問:傍線部の解釈

先ほど読んだところと重なりますから、すぐに処理ができると思います。

大しうは、親がすっかり老いてしまったことを悲しんでいた。

だから、「親に孝ある者」だったんですよね?

ここまで分かっているならば、大しうが悲しんでいる内容は説明できなければおかしいです。

注釈にある言葉がそのまま解答の要素になりますから、しっかり利用していきましょう。

解答は、 両親が/すっかり衰えてしまったこと となります

第3問:現代仮名遣い

たかが一点、されど一点。

漢字問題と同じく、確実に得点すべきところです。

こちらも5年分まとめてみました。

【問題】【解答】【決まり手】【出題形式】
ひろふひろう語頭以外のはひふへほ→わいうえお傍線部を
ゐていてゐ→い ゑ→え (いずれもワ行)傍線部を
使ふ語頭以外のはひふへほ→わいうえお平仮名の部分を
訴へ語頭以外のはひふへほ→わいうえお平仮名の部分を

歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直す上でのルールは全て覚えておくのが前提ですが、それほど困難な要求はされていないことが分かると思います。

どちらかというと、出題形式の確認を怠って失点するケースを防ぐべきでしょう。

上の表にもある通り、「傍線部すべてを」現代仮名遣いに戻すものと、「傍線部中の平仮名の部分だけを」現代仮名遣いに直すものがあります。

条件に従っていなければ、たとえ理解できていたとしても0点ですから、問題文は当たり前のように熟読してくださいね。

解答は、 え となります。

第4問:会話文への穴埋め(空欄Ⅱ正答率:14.7%、部分正答率9.6%)

まずは空欄Ⅰの前後から確認していきましょう。

大しうが( Ⅰ )から願いがかなったんだね。

願いがかなって、両親が若返った理由を答えなさいと言っています。

本文では、帝釈天王が以下のように語っていますね。

なんぢ、浅からず親をあはれみ、ひとへに天道に訴ゆること、納受を垂れ給ふによって、われ、これまで来るなり。いでいで、なんぢが親を若くなさん」

「お前が深く両親を思って、ひたすら神仏に祈って訴えたから、両親を若くしてやろう」と言ってくれていますね。

これを言い換えた選択肢は一つしかありません。

解答は、 イ 神仏に熱心に祈り続けた となります。

続いて、空欄Ⅱの前後を検討していきましょう。

この出来事が、みかどに七種類の野草を差し上げるきっかけになったんだね。七種類の野草を差し上げることで、みかどに( Ⅱ )という気持ちを伝えるためなのだろうね。

さて、七種類の野草を差し上げることは、どういう意味があったでしょうか?

「この」出来事が~きっかけ、と言っていますから、【大谷さんが読んだ続きの要約】を確認しましょう。

七種類の野草で薬をつくって大しうの両親に与えると、二十歳くらいの姿まで若返っていますよね。

ということは、「ずっと元気でいてほしいという願いの象徴」として七種類の野草が捉えられていることは分かると思います。

解答は、 いつまでも若く、健康でいてほしい となります。


以上で大問3の解説は終わりです。

古文が来るか、漢詩が来るか。

どちらも対応できるように対策しておくのは当然ですが、基本をしっかりおさえておけば、問題文からヒントを見抜くことができます。

複数資料や会話文を恐れず、過去問演習で、適切な解答方針を手に入れましょう。

次は、大問4を解説していきます。