広島県公立高校入試:大問2「論理的文章」後半

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

この記事では、令和2年度広島県公立高校入試・大問2の解説を行います。

第1問~第2問の解説はこちら

第3問:熟語の構成

漢字検定を受験した経験のある学生であれば、慣れ親しんだ形式の問題だと思います。

熟語の構成を問う問題は3年連続の出題となっていますので、しっかり対応できるようにしておきたいところです。

熟語の組み立てられ方の知識があるのは前提ですが、もう少し基本的なところにあるポイントは意識できていますか?

熟語は訓読みして意味をつかめ!

それぞれの漢字を訓読みして日本語として意味を捉えることで、熟語の組み立てられ方のイメージも湧くということは多いです。

ぜひ試してみてくださいね。

さて、熟語の組み立てられ方について、以下にまとめてみましょう。

①似ている意味の組み合わせ例:火炎、森林などウ 樹木
②逆の意味の組み合わせ例:上下、左右などエ 善悪
③上の漢字【説明する語(修飾語)】+下の漢字【説明される語(被修飾語)】例:円形、海底などア 常備
④上の漢字【動作】+下の漢字【を/に】例:登山、記名などイ 読書
⑤上の漢字【主語】+下の漢字【述語】例:県営、頭痛など
⑥上の漢字が否定の語【不・無・非・未】例:不明、無能など

傍線部「公言」を訓読みしてみると、「公(おおやけ)に言う」となりますから、上の表でいうと③に当たりますね。

解答は、   ア   となります。

第4問:接続詞

接続詞が穴埋めの問題の形で出題されたのは、平成28年度から令和2年度の5年間において、実に4回です。

鉄板の出題ですが、「入試に出題されるから」という後ろ向きな理由だけで対策するわけではありません。

そもそもここが理解できていないと本文が読めていないと言っても過言ではありませんから、必ずクリアしてください。

では、以下にまとめてみますね。

①順接 【A (原因) ⇒ B (結果)】だから、したがって、すると、ゆえに・・・雨が降った。だから、家にいた。
②逆接 【A (反対説) ⇔ B (自説)】しかし、けれども、だが、ところが・・・雨が降った。しかし、外で遊んだ。
③並列・累加 【A & B】また、および、そのうえ、なお・・・大雨警報、および洪水警報のため、休校になった。
④対比・選択 【A or B】または、あるいは、もしくは、それとも・・・リンゴ、またはバナナをデザートにしなさい。
⑤説明・補足 【A → A’(理由/具体例/要約などの補強) 】つまり、たとえば、なぜなら、ただし・・・おにぎり、炒飯、リゾット。つまり、米料理が好きだ。
⑥転換 【A / あ(話題の変更)】 さて、ところで・・・僕は野球が好きだ。ところで、君は何が好きなの?

例文を踏まえながら、接続詞の働きを確認してみてください。

接続詞を判断する際に重要なのは前後文脈の関係性ですから、問題を解く際にも前後の内容を確認する必要があります。

モランディの作品の多くは、さほどサイズが大きくなく、こぢんまりとしている。かつ、描かれているのは、なんの変哲もない瓶や水差しや花瓶などだ。それらの同じようなモティーフが、繰り返し繰り返し、作品の中に登場する。

【接続詞】、背景が変わったり、視点が変わったりすることもなく、ただただ、坦々と、同じようなものを、固定された視点で、ひたすらに、ひたむきに描いているのだ。

空欄の前には、「モランディは、同じようなモティーフを繰り返し描いている」という内容が書かれていますね。

空欄の後には、「同じようなものが、同じような視点で繰り返し描かれている」という内容があります。

うん、同じような内容が、言い換えられながら並べられているだけですね。

つまり、上の表でいうところの③並立・累加の接続詞が入る、ということになります。

このように、どの種類の接続詞が入るのかをあらかじめ決定してから選択肢を見てください。

間違っても選択肢を先に見て、空欄に入れてみて、「う~ん、どれも入る気がしますねぇ」なんてことをやっていたら駄目ですよ。

選択肢にある接続詞は、ア ところがー②逆接、イ それともー④対比・選択、ウ むしろー⑤説明・補足、エ しかもー③並立・累加 です。

解答は、   エ しかも   となります。

第5問:理由説明(正答率3.2%/部分正答率58.6%)

著作権の問題で墨塗になってしまっているので解説が非常に難しいですが、墨塗部分には約400字の文章が資料として載っています。

英俊社さんの「広島県公立高等学校 過去問」を購入していただくと、読むことができます。

モランディの画家としての特徴が述べられた文章ですが、非常に明快な文体ですから、筆者の主張をつかむのは容易いと思います。

簡単にまとめてみると、

A ではなく B(筆者の主張) という構文から、①モランディは小さな変化に積極的価値を見出していること

~必要がある。(筆者の主張) という構文から、②小さな変化を生み出すには、感覚を研ぎ澄ませる必要があること

を読み取れ、という文章です。

【資料】からはそれだけつかんで、傍線部の分析に参りましょう。

「不思議な満足感」とあります。

筆者は「モランディ展」を回って、ピカソやマティスやセザンヌの絵画を見たときとは異なる満足感を感じるのですね。

「腹八分」なのに「おだやかな満足感」を覚えてしまう。

それを「不思議」と表現しているわけです。

では、その満足感は何に由来するものなのでしょうか?

それを【ノート】では以下のように説明しています。

この「凍ったような情熱」を鑑賞することができたから、筆者は「不思議な満足感」を得ることが出来たのだろう。

モランディの絵画の中に、「凍ったような情熱」を感じたから、「不思議な満足感」を得ることが出来た。

「この」という指示語がありますから、「凍ったような情熱」の内容を空欄Ⅱで示しているということが分かると思います。

では、「凍ったような情熱」とはそもそも何でしょうか?

「凍ったような情熱」という言葉が出てくる場所を、本文から探しましょう。

10段落目ですね。

なぜそうまでして、同じものばかりを描き続けたのか。

(中略)

そう、モランディの描く絵には、不思議と情熱が感じられるのだ。ただし、その温度が極めて低い。

(中略)

その凍ったような情熱が、…

③モランディが同じものばかりを描き続けたこと   に、「凍ったような情熱」を感じているのですね。

さて、【ノート】の空欄前後の分析です。

モランディの絵から「凍ったような情熱」が感じられるのは、モランディが描く側として( Ⅱ )からである。

モランディの画家としての姿勢が、「凍ったような情熱」を感じさせるのだと教えてくれていますね。

モランディの画家としての姿勢については、本文、【資料】から押さえました。

それらをまとめて、空欄に入るように編集すれば解答になりますね。

解答は、   ①小さな変化を描くことに積極的価値を見出し ②研ぎ澄まされた感覚によって ③同じものを描き続けた   となります。

例のごとく、表現が異なっていても、同様の内容が条件に従った形で書かれていれば正答です。


さて、いかがだったでしょうか。

第5問は捉えるべき要素が3つあり、なかなかの難問だと言えると思います。

しかし、解答するのに必要なヒントや誘導は全て与えられているわけですから、それらを見抜いて利用する訓練を適切に積んでいれば、対応できないレベルではありません。

むやみに恐れるのではなく、解答の核をしっかり捉え、部分正答で得点を重ねていくというのも立派な戦略ですよ。

次回は、大問3の解説を致します。

お楽しみに。