広島県公立高校入試詳解:大問2「論理的文章」前半
広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。
この記事では、令和2年度広島県公立高校入試・大問2の解説を行います。
大問2でのポイントは以下の3つです。
①解答根拠の探し方を明確に持っていないと、制限時間内に解き終えられない可能性が非常に高まる
→ 問われている内容そのものの難度が高くなくても、文章が複数あったり、図表が示されたりしていると、その内容の理解にも時間をとられてしまいます。
ですから、傍線部の分析の仕方、ヒントの見つけ方、問題文の誘導の見つけ方が明確化されていないと、解くのにかかる時間が長くなり、結果的に他の大問に割くべき時間が圧迫されてしまうことが考えられます。
解答根拠の探し方の方針、私が言うところの「解の原則」をしっかり体得しておく必要があります。
②複数資料や図表に惑わされず、メインテキストの理解を最優先する
→ おそらく、広島県公立高校入試を受験するほとんどの学生が、複数資料型の問題を解いた経験が薄いでしょう。
対策できて、過去問5年分。
これを有効に使う必要がありますね。
重要なのは、メインテキストの理解を最優先することです。
他の資料はメインテキストとのかかわりの中で出題されるわけですから、まずはメインテキストの主張を理解できていなければスタートラインにも立っていないということになります。
③表現の工夫とその効果について問う問題が出題される可能性が非常に高い
表現の工夫とその効果について問う問題は、広島県公立高校入試5年間(平成28年度~令和2年度)で、3題出題されています。
平成31年度大問2-第5問 | 図表への穴埋めの形で、論を進める上での工夫と効果を記述する問題 |
平成30年度大問2-第3問 | 譲歩(たしかに~だろう)→主張(しかし~だ)構造の抜き出し |
平成28年度大問2-第4問-e | 図表への穴埋めの形で、図のもたらす効果を記述する問題 |
大学入学共通テストが令和3年度(2021年)から実施されますが、その施行テストの傾向を大いに反映しているのが、広島県公立高校入試です。
当然、出題される可能性は高いですから、一定の知識を持っておきたいところです。
第1問:漢字の読み書き
漢字問題についての考え方は、大問1の解説に示した通りです。
堅実に得点していきましょう。
解答は、 ①めぐ ②ぼっとう ③きわ となります。
第2問:理由説明(正答率18.9%/部分正答率59.0%)
理由説明の基本に則って解説をしていきますね。
①傍線内の内容を理解すること
一瞬にして、その場の空気がさっと変わった。
「その場」。
指示語ですから、どういう場なのかを確認します。
アート関係者が集まる酒宴の席で、「1枚だけ絵画がもらえるとすると、誰のものが欲しいか」という話題になる。
誰もが熟考を重ねているときに、現代アートを専門とする友人が「モランディ」という画家の名前を挙げます。
それは、作者にとって「意外な画家の名」であったらしい。
以上の内容が、直前の文から読み取れますね。
さて、その「意外な画家の名」を聞いた途端、場の空気が「さっと変わる」のです。
なぜでしょうか。
まぎれもなく「モランディ」という名が与えた影響ですが、それがその場において何を意味する名なのかはいまだ判明しません。
ですから、後ろを読む、ということになるわけです。
②その直接的な要因を、本文から探すこと
傍線部を含む段落の次の段落には、以下のような言葉が書かれています。
このエピソードは、ジョルジョ・モランディという画家を巡る象徴的なふたつのことを物語っている。
(中略)
つまり、……いたって地味な画家であること。
もうひとつは、……「憎からず」思っている画家なのだということ。
つまり、誰にも「あの画家はいい」といわしめる普遍的な「何か」を、モランディは持ち合わせているーといえるのではないか。
モランディは目立たない。
けれども、誰もが魅力的に感じる「何か」を持ち合わせている。
一番には名前が挙がってこないような、それでいて魅力のある画家の名をズバリと出した意外性!
それに対して、「さっと、その場の空気が変わった」と理解できると思います。
③見つけた直接要因を傍線部の上に代入して、意味が通るか確認すること
先ほど見つけた直接要因と傍線部をくっつけてみましょう。
一番には名前が挙がってこないような、それでいて魅力のあるモランディという画家の名を、ズバリと出した意外に思ったから
+
さっと、その場の空気が変わった。
意味が…通りますね。
さて、解答の方針が立ちました。
今回の出題形式は、穴埋め問題ですから、穴以外の場所を分析していきましょう。
筆者の友人が答えた「ジョルジョ・モランディ」という画家は、( Ⅰ )画家であるため、酒宴に参加した人たちが、全員、一様に、「その手があったか!」という表情を見せたから。
モランディはどういう画家だから、酒宴にいた人たちを意外に思わせたのか。
45字以内で書けば、正答です。
解答は、 いたって地味だが、誰にでも「あの画家はいい」といわしめる普遍的な「何か」を持ち合わせている となります。
ただし、上記の解答は本文の表現を抜き出しているにすぎません。
同内容を自分の言葉で言い換えていても当然正解ですし、その方が高校以降の国語で困らないでしょうね。
①一番には名が上がらないほど目立たないが、
②誰もを引き付ける普遍的な魅力を持ち合わせた
などと言い換えてあるほうが、よほど「頭を使った解答」として好感が持てますね。
さて、第2問までの解説でずいぶんな字数を割いてしまいました。
次回は、第3問以降の解説を致しますので、お楽しみに。