広島県公立高校入試詳解:大問1「文学的文章」前半

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

この記事では、令和2年度広島県公立高校入試・大問1の解説を行います。

全体概観はこちらへどうぞ。

問題は以下のURLからご確認下さい。

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku/06senior-2nd-r2-nyuushi-r2-kou-r2-kou-kennsayoushi-r-2-kou-kensayoushi.html

ポイントとなるのは以下の2点です。

①心情にマーキングをし、心情が変化するキッカケをつかもう

②問題文のヒントを見逃さず、「誘導」に乗っかろう

上記の2つのポイントを使って解説をしていきますから、「そういうことか!」と納得をしながら進めていってくださいね。

第1問:漢字の読み書き

まずは第1問、漢字の読み書きの問題です。

直近5年で出題されている「漢字の読み書き」問題の配点は、5点→6点→4点→6点→6点と推移しています。

大問1だけにある場合、大問1・大問2に3問ずつある場合など、多少のマイナーチェンジはありますが、小中学校で扱った漢字が出来ていれば十分対応できるでしょう。

ただの知識問題だとは言え、全体の10%前後をそれが占めているわけですから、基町高校、舟入高校、国泰寺高校、安古市高校などの公立上位校への進学を目指している学生は、当たり前のように完答できなければならないと思ってください。

解答は、①結局 ②厚 ③縮 となります。

第2問:行動の理由説明

さて、「行動の理由説明」と書きました。

行動には、理由がある、と言ってご理解いただけるでしょうか?

たとえば、ヨシヒデが涙を流したとしましょう。

これ、理由もなく涙を流しているとすると・・・あまり関わり合いにはなりたくありませんよね。

「涙を流す」という行動にヨシヒデが至るためには、なんらかの心情の変化がなくてはいけません。

ここでは、「悲しみ」の涙だとしましょうか。

しかし、「悲しみ」という心情もまた、なんの理由もなしに沸き起こるものではありません。

キッカケがあるはずですよね?

ここでは、「可愛がっていたペットが死んでしまった」ということにしましょう。

すると、ヨシヒデが「涙を流す」という行動に至るまでのプロセスは以下のようになります。

ペットの死【キッカケ】→ 悲しい【心情】→ 涙を流す【行動】

このプロセスを理解していれば、第2問は驚くほど単純な問題になります。

問題文の分析から入りましょう。

一つ注意点なのですが、傍線部は必ず一文に戻してから分析してください。

平均点を調整する1つのテクニックとして、直接的なヒントは傍線内に含めない、というものがあるからです。

今回、傍線1を一文に戻したときに出てくるヒントは、「そのどの顔も、」という言葉です。

「その」という指示語が使われていますから、その指示内容は「吉が、習字の時間に、草紙に落書きしていた顔」を指しています。

さて、傍線部です。

笑いを浮かばせようと骨折った大きな口の曲線が、幾度も書き直されてある とあるが、

次の文は、吉がこのような行動をとった理由について述べたものです。

→ 傍線部が「吉の行動」だということを、はっきりと書いてくれていますね。

ですから、その行動が表している心情、その心情をもたらしたキッカケについておさえていけば良いのです。

空欄Ⅰに当てはまる適切な表現を十字以内で書きなさい。

→ しかも、穴埋め問題になっていて、字数指定まであります。

ヒントの大盤振る舞いです。

では、穴埋めはどうなっているでしょう。

吉は、習字の時間も( Ⅰ )のことが気になっていたから。

→ 「気になっていた」という心情、「( Ⅰ )のことが」というキッカケの形を与えてくれています・・・。

なんて親切なんでしょう!

私たちは与えられたヒントに沿って解答を書いてあげれば良いだけですね?

傍線部には、「吉が授業中に顔の落書きをしていて、それを何度も書き直すほど気にかけている」ことが示されていました。

吉は顔のことが気になっているわけです。

では、吉が気にする「顔」とは何か?

「前日の夜に夢で見た顔」ですよね。

これがそのまま解答になるわけです。

ただし、10字以内という制限字数の中で、同じ意味の内容が書けていれば正解になりますから、解答例を複数示しますね。

解答は、夢に出てきた顔/夢に出てきた大きな顔/夢に出てきた笑顔/前日の夜に夢で見た顔 となります。

①夢の中で見たものであるということ

②「顔」という語が入っていること

③「~のこと」につながる形で書かれていること

以上の3点が守られていれば、表現が異なっていたとしても、幅広く得点は与えられるでしょう。

第3問:言い換え

この問題は、簡単そうに見えて少しだけ曲者です。

「同じこと」という指示語的表現(指示語ではないが、それに類する働きをする語)がポイントであることは間違いありません。

同じことって、何と同じなの?

それは当然ながら、傍線部よりも前に書いてあります。

屋根裏で丸太を削ってなにやらやっている、ということはすぐに掴めます。

しかし、「丸太を削る作業」が何を意味するのかについては、もっと後の部分を読まないと分からないんですね。

ここで大切なのは、国語の問題すべてに共通する考え方を持っているかどうかです。

分からなければ、後ろを読め!!

もちろん、後ろを読んでも分からない場合もありますが、その多くは解答者の知識不足が原因です。

分からない部分は、説明される。

少なくとも、「試験」と名がつくものに採用されている文章においては、必ずです。

信頼して、後ろを読みましょう。

すると、吉の屋根裏での行動が家族に露見するシーンが訪れます。

夢で見た顔の仮面を掘っていたんですね。

これで、解答が導けます。

解答は、 屋根裏で仮面を彫っていた。 となります。

屋根裏で丸太を削っていた。 など、「仮面」について触れられていないものは、減点対象でしょう。

2点問題ですから、その場合は1点ということになります。


以上、広島県公立高校入試の大問一「文学的文章」の第3問まで解説してきました。

第4問・第5問は、次回の記事で解説いたしますのでお楽しみに。