広島県公立高校入試詳解:全体概観

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。
まずは、広島県公立高校入試の全体概観をお伝えし、そのあと令和2年度実施の問題を一題ずつ分析・解説していきますね。
正答率が20%を切っている問題については、その正答率も示します。
令和2年度の問題・解答は、下記リンクからご覧いただけます。
さて、結論から申し上げます。
1,文豪の作品が出題される傾向は今後も続く(はずであり、べき)
2,問題文の「誘導」をつかめるかどうかが読解のカギ
3,形式に慣れるためには、「平成28年度~令和2年度」(直近5年分)の過去問が有効
第一問は文豪の作品が素材に?
まずは下の表を見ていただきましょう。
令和2年度 | 横光利一「笑われた子」 |
平成31年度 | 菊池寛「餓鬼」 |
平成30年度 | 三島由紀夫「白鳥」 |
平成29年度 | 志賀直哉「或る朝」 |
平成28年度 | 川端康成「ざくろ」 |
5年連続で文豪の作品が出題されていることが分かると思います。
「こんなの読んだことないよぉ~!」という悲鳴が聞こえてきそうです。
というか、聞こえていました笑
文豪の作品なんて学校で読んだ「高瀬舟」ぐらいだ!という中学生がほとんどですからね。
けれども、仕方がない。
国語の教科書(中3・光村書店)の中には、「古典・近代文学の名作」という資料が載っています。

乱暴な理屈ではありますが、ちゃんと教科書で扱った(はずの)内容を用いて作題していますから、文句は言えません。
さて、子どもたちが普段読み慣れていない難解な文豪の文章が5年連続で出題された理由は何でしょうか?
もちろん、文豪たちが練磨に練磨を重ねて磨き上げた言霊を、名作の数々を子どもたちに味わわせたい、という教育的意図はあったことでしょう。
しかし、それが「難解なだけ」なら、非難殺到、5年も出題し続けることなんてできないと思いませんか?
ちゃんと、カラクリがあるんですね。
問題文がヒントまみれ
文章が難しいなら、ヒントをあげればいいじゃない!
斬首されない優しいマリー・アントワネットです。(パンが無ければ発言は彼女のものではないらしいですが)

広島県公立高校入試の問題文、よくよくご覧になってください。
とても、長い。
本文が2つあると見まがうほどの長さの会話文があったりもします。
これ、全部ヒントなんですよ。
①字数を指定する | 穴埋め問題と併用する:解答候補を絞りやすくなる / 記述問題と併用する:解答要素の個数が判断しやすくなる |
②形式を指定する | 条件付けがあることで、解答の書き出しがスムーズになり、解答が目指すべき方向性が定まる |
③穴埋め問題を採用する | 穴以外の場所が完璧な解答になっているため、それを読むことで本文の理解が助けられる |
④会話文を採用する | 会話そのものが本文のテーマの解説になっており、本文理解の方向性が定まる |
他にもヒントの出し方はありますが、広島県公立高校入試が主に採用しているものは上の通りです。
こんなにもヒントまみれになっているのに、それをヒントだと認識できている人が少ないだけなんです。
もし、出されているヒントに気付かないままなら・・・。
広島県公立高校入試はとんでもなく「難しい」ものに感じられるかもしれませんね。
5年分の過去問+標準レベルの問題集で対策を
普段読み慣れない文章、解き慣れない問題形式。
しかし、問題文の「誘導」を見抜く訓練をしっかりこなせば、必ず対応できます。
そこでお勧めしたいのが過去問演習です。
広島県教育委員会のホームぺージでは、過去実施された公立高校入試の掲載がされています。
それを5年分解くことで、広島県公立高校入試の狙いがつかめるようになるはずです。
5年分、と書きました。
しかし、この「5年」という数字はテキトーに設定しているわけではありません。
広島県公立高校入試の出題形式ががらりと変わったのが、平成28年度。
つまり、5年前なのです。
この出題形式の変化で、平均点は28・8点から25・6点へと急下降しました。
なぜ出題形式が変化したかというと、大学入試改革の影響を受けているのですが、細かい説明は割愛しますね。
とまぁそういった事情もあり、6年前の過去問からは現在のものとかなり形式が異なり、易しい内容になっています。
ですから、「現行の出題形式に慣れる」という目的を考えると、平成28年度~令和2年度の過去問を解くことをお勧めいたします。
また、形式に慣れた後は標準的な難度の問題集で、地力をつけていくと良いです。
問う形式は変わったとしても、問われている内容の根本は変わりませんから、つけるべき力も変わりません。
形式ばかりに目を取られず、地に足着いた学習を行いましょう。