人にやさしく

広島国語屋本舗 現古館・館長の小林です。

マーキングでおさえた筆者の主張は、あくまで「解答をつくるための材料」にすぎない。

前回そうお伝えしましたが、ではその材料の加工には何が必要なのでしょうか。

答えは、「やさしさ」です。

唐突に何を言い始めたんだ、と不審に思った方も多いと思います。

怪しい説法を始めようというわけではありませんから、もう少しだけお付き合いください。

解答をつくるための材料を、解答へと加工するためには「やさしさ」が何より大切なのだ、と私は実際に指導しています。

 ここで言う「やさしさ」とは、「人に伝わる表現を選ぶやさしさ」です。

国語の指導の現場では、「答えは本文の中にあるんだ!」と語られることが非常に多いです。

私はこれ、「言葉足らずだなぁ」と思っていつも聞いています。

もちろん、上にも書いている通り、解答をつくるための材料は本文にありますよ。

けれども、本文に書いてあることを切り貼りするだけの作業が国語の問題を解くことであるはずがありません。

もしそうなら、その程度の作業でいったい何の力を試しているのでしょうか。

「文章を理解できていることを作題者に示すのが国語の問題」と、私は言いました。

「作題者」にそれを示すためには、伝わる表現を選択する必要があります。

そこで重要なのが「やさしさ」です。

問題文と自分の作った解答を読んだだけで、文章の内容がつかめる。

そこを目指して説明を試みるわけです。

どこを、どうやって、どこまで説明すれば伝わるのか。

私はそれを「解の原則」という明文化したルールの形で伝えます。

しかし、何より重要なのは「人に伝えるために書いている」という認識です。

その認識がないなら、国語の問題を解くスタートラインにすら立てていません。

砂の上にお城は建ちません。

土台も作らず「受験テクニック」のような些末なものばかりを求めても、砂上の楼閣はすぐ崩れてしまうと知るべきでしょう。

具体的な話は、土台を作った後です。